家族に支払う管理報酬は本当に経費になる?税務署が見る3つの判断基準と失敗パターン

節税・確定申告
  1. はじめに
  2. 第1章:なぜ「家族への管理報酬」はトラブルになりやすいのか?
    1. よくある誤解
    2. サラリーマン投資家ほど危ない理由
  3. 第2章:家族への管理報酬が経費になる「3つの判断基準」
    1. 判断基準その① 実態があるか
    2. 判断基準その② 金額が相場とかけ離れていないか
    3. 判断基準その③ 継続性・客観性があるか
    4. この3つが揃わないとどうなるか?
  4. 第3章:経費として認められる具体パターン
    1. 認められやすい業務内容
    2. 相場感(税務上無難なライン)
    3. 外注と比較したときの税務上の自然さ
  5. 第4章:税務調査で否認されるよくあるパターン
    1. 失敗①:何もしていない妻に毎月10万円
    2. 失敗②:契約書なし・業務内容の記録ゼロ
    3. 失敗③:現金手渡し・生活費と混在
    4. 失敗④:過去にさかのぼってまとめて経費化
    5. 否認されるとどうなるか?
  6. 第5章:安全寄りの具体的なやり方
    1. ポイント① 業務内容を明確にする
    2. ポイント② 金額は常識的な相場にする
    3. ポイント③ 作業記録を残す
    4. ポイント④ 支払いは必ず銀行振込にする
    5. ポイント⑤ 税理士に否認されないラインを事前確認
  7. 第6章:家族報酬 vs 外注管理会社|どちらが得か?
    1. 節税効果の比較
    2. 手間の比較
    3. 税務リスクの比較
    4. どちらが得か?
  8. 第7章:サラリーマンが家族報酬を使うべき人・使わない方がいい人
    1. 向いている人
    2. 向いていない人
  9. まとめ

はじめに

不動産投資をしているサラリーマンの中には
「妻に管理を手伝ってもらっている」
「親に清掃を頼んでいる」
といったケースは珍しくありません

そして、あるていど収益が上がるようになってくると
一度は耳にする話で疑問に思うことは

「家族に払った管理報酬は経費にできるのか?」

ということです

インターネットでは「節税になる」「奥さんに給与を払うのは常識」
といった情報も多く、節税テクニックとして紹介されることもしばしばです

家族への支払いは、やり方を間違えると税務調査で否認される可能性があります

本記事では、経費になる場合・ならない場合、税務署が見ている判断基準、失敗例、サラリーマンでも安全に使える方法について解説します

第1章:なぜ「家族への管理報酬」はトラブルになりやすいのか?

家族に支払う管理報酬は、税務調査で必ずチェックされるポイントです
その理由はシンプルで

身内同士のお金のやり取りは、架空経費に使われやすい
と税務署が考えているからです

よくある誤解

多くの人が次のように誤解しています

  • 振り込めば経費になる
  • 契約書さえあれば問題ない
  • 家族に払うのは当たり前だから大丈夫

しかし、実際には税務署は
「実態があるか」「金額が不自然でないか」「継続的な業務か」
という点を確認しています

つまり、実態・金額・継続性の3つが揃っていなければ
経費として認めないという姿勢ということです

サラリーマン投資家ほど危ない理由

サラリーマンの方は、

  • 普段は本業が忙しい
  • 管理を家族に頼りがち
  • 記録を残す習慣が少ない

という傾向があり
知らないうちに税務リスクの地雷を踏みやすい構造 になっています

第2章:家族への管理報酬が経費になる「3つの判断基準」

税務署は家族報酬を見るとき
特に着目しているのは3つの判断基準です

整理して確認しておきましょう

判断基準その① 実態があるか

本当に仕事をしているかという、最も重要なポイントです

  • 清掃した日付
  • 入退去対応の記録
  • メールや電話対応の履歴

業務をした証拠があるかを非常に重視します

記録がゼロの場合
実態なしと判断され、否認されてしまいます

判断基準その② 金額が相場とかけ離れていないか

常識を外れた法外な報酬も狙われて、よく否認されるポイントです

家族だからといって
とても簡単で頻度が低い仕事で

  • 月10万円
  • 年間100万円超

といった支払いは説明のしようがありません

税務署は「第三者に同じ金額を払うか?」
という視点で確認してきます

答えが「No」であれば、やはり経費として認めてもらえません

判断基準その③ 継続性・客観性があるか

継続的に仕事をしているか客観的に確認できるかが重要です
具体的には

  • 契約書
  • 業務内容の記録
  • 銀行振込の履歴

少なくとも、これらが揃っているかどうかで判断されます

特に、現金手渡しだけで記録に無い場合は、ほぼ確実に認めてもらえません

この3つが揃わないとどうなるか?

非常にシンプルです
1つでも欠ければ、税務調査では高い確率で否認される
と考えてください

「契約書はあるが記録がない」「実態はあるが金額が高い」といったケースで
そのまま経費として認められず、追徴課税にされてしまいます

第3章:経費として認められる具体パターン

家族への管理報酬は「正しくやれば経費として認められる」取引です
ここでは、税務署がもっとも自然に受け入れやすい典型的な業務と金額の目安を整理します

認められやすい業務内容

次のような作業は、外注でも発生するため 客観性のある業務 として判断されやすいです

  • 清掃・リネン交換
    清掃会社に依頼すれば1回5,000〜15,000円程度は普通です
    そのため家族が担当する場合も十分「自然な業務」として説明できます
  • 入居対応の立ち会い
    入居者の鍵受け渡し、設備確認など
    管理会社でも1回5,000〜10,000円の範囲で行われるため、家族が担当しても違和感がありません
  • 入居者対応の一時窓口
    「水漏れの連絡」「騒音トラブルの初期対応」などの軽微な連絡業務
    この業務は実務があれば経費として認めやすい領域です

相場感(税務上無難なライン)

個人の不動産投資における家族報酬では
月1〜3万円(年間12〜36万円)ほどであれば
税務署が違和感を持ちにくいラインです

具体例に照らし合わせると

  • 清掃:月1〜2回なら、5,000〜20,000円
  • 入退去対応:年1〜2回なら、年数千〜2万円
  • 連絡窓口:月数回なら、月5,000〜10,000円

のように、外注した場合と比べて妥当か著しく乖離していないか?
という視点で考えると、税務調査でも説明しやすくなります

外注と比較したときの税務上の自然さ

外注すると 1件ごとの単価がはっきりしているため
家族に頼んだときも同程度であれば自然です

例えば、清掃会社で1回8,000円の場合は

1回6,000円くらいであれば妥当に感じますし
1回2万円くらいになると不自然に感じます

数字が外注相場と近いほど、税務署は「業務実態あり」と判断しやすいです

第4章:税務調査で否認されるよくあるパターン

税務調査では記録を確認する方法が基本となりますので
家族報酬が否認されるのは、悪意ではなく形式を整えていないだけのケースが大半です

失敗①:何もしていない妻に毎月10万円

これは税務署が最も疑うパターンです

  • 作業実態なし
  • 金額が不自然
  • 節税目的が丸見え

この3つが揃ってしまうため、調査官から見ればほぼ100%否認されてしまいます

失敗②:契約書なし・業務内容の記録ゼロ

まったく記録が無いため

  • 何をしたのか
  • どの頻度か
  • どの対価か

これが客観的に説明できないため
税務署は「実態なし」と判断し否認されてしまいます

失敗③:現金手渡し・生活費と混在

現金は「証拠が残らない」ため、否認の大きな要因となってしまいます

さらに

  • 預金通帳で生活費と混在
  • 財布から適当に渡す

などの場合、家族報酬とは認められません

失敗④:過去にさかのぼってまとめて経費化

次のように過去にのぼる場合

  • 今年の経費に入れ忘れたから去年の分も一気に…
  • 3年まとめて支払ったことにした

という例は当然認められません、確定申告は年度単位が基本ですので
過去の申告漏れは、過去の申告の修正で対応する必要があります

否認されるとどうなるか?

否認は追加で税金を払うだけでは済まな場合があります

たとえば当該年で見つかると、過去にも行っていること疑われるため
過去3〜5年分を確認されて、まとめて再計算されることが多くあります

再計算にあたっては

  • 所得税
  • 住民税
  • 延滞税(最大14.6%)
  • 過少申告加算税(10〜15%)

これがまとめて請求されます

10万円/月分の税金を3年間に相当する額が否認された場合で

10万円 × 12ヶ月 × 3年 = 360万円

税金+ペナルティを含めれば 約450〜500万円 になることもあるということです

第5章:安全寄りの具体的なやり方

家族報酬を使うなら「節税」ではなく
税務調査で堂々と説明できる形を最優先にしておきましょう

気をつけるポイントを押さえておけば否認されるリスクは限りなく低くなります

ポイント① 業務内容を明確にする

不動産運営で代表的な業務として

  • 清掃
  • 入退去立ち会い
  • トラブル一次対応
  • メール・電話連絡

などを明文化し、業務委託契約書に記載しておきましょう

ポイント② 金額は常識的な相場にする

月1〜3万円がもっとも安全な目安です
外注費と同じくらいの金額にしておくとよいでしょう

ポイント③ 作業記録を残す

書式はなんでもOKです

  • 日付
  • 作業内容
  • 作業時間

が分かるような記録で十分です
Googleスプレッドシートでまとめていても問題ありません

ポイント④ 支払いは必ず銀行振込にする

税務署が最も重視するのは 「証跡」 です

  • 毎月同じ日に
  • 同じ金額を
  • 同じ口座に振り込む

これだけで客観的な説明性が上がり、信頼度が大きく上がります

ポイント⑤ 税理士に否認されないラインを事前確認

家族報酬はグレーではなく 「白にも黒にもなる領域」 です

事業の実態によってもケースが異なりますので、税理士が一度OKを出した仕組みなら
調査でも説明しやすくなります

家族報酬は「控除額が大きい節税術」ではありません
年間で10〜30万円程度が一般的ですが

  • 税務上の安全性
  • 手間の削減
  • 家族の協力体制づくり

という意味では、非常にメリットの大きい運用方法です

第6章:家族報酬 vs 外注管理会社|どちらが得か?

家族への管理報酬は、節税目的で語られやすい一方で
管理会社へ依頼したほうが結果的に得になるケースもあります

ここでは「節税効果」「手間」「税務リスク」の3つの軸で比較します

節税効果の比較

家族報酬のほうが節税額は大きくなりやすいが、金額は限定的です

  • 家族報酬の場合
    月1〜3万円程度を経費にできる(年間12〜36万円)
  • 管理会社の場合
    管理料は家賃の3〜5%が相場
    たとえば家賃7万円なら月2,100〜3,500円(年間2.5〜4.2万円)

「節税額だけ」を比較すると家族報酬が有利に見えますが
不動産全体の収支に比べるとインパクトは限定的です

手間の比較

手間だけでいえば、
管理会社 > 家族 > 自主管理 の順で楽になります

  • 管理会社の場合
    トラブル対応・入退去・清掃の手配まで丸投げで対応可能です
    サラリーマン投資家と相性がよい
  • 家族報酬の場合
    家族が対応するため負担は軽いが
    依頼の管理・作業記録・振込管理の手間が増えます
  • 自主管理の場合
    当然ながら、もっとも手間が多くかかります

家族報酬は「手間は減るが、事務作業は増える」という特徴があります

税務リスクの比較

税務リスクを比較する見ると

  • 管理会社:リスクほぼゼロ(外注なので合理的)
  • 家族報酬:条件を満たさなければ否認されてしまう可能性
  • 自主管理:経費化できる部分が少ない

特にサラリーマン投資家の場合
「管理会社の費用はすべて経費」と説明できるため、調査でも安全性が高いです

どちらが得か?

一般に

  • 1〜2棟の運用なら管理会社のほうが合理的
  • 複数棟・複数戸になると家族報酬が現実的

というのが実務の結論です

  • 棟数が増える
  • 清掃・立ち会いなどの業務量も増える
    家族報酬に経済合理性が出て、税務署も納得しやすくなります

一方で、1棟だけで家族報酬に毎月3万円払う場合は
「外注したほうが安く済むのに、なぜ家族に?」となり、税務署の目線では不自然に映ります

第7章:サラリーマンが家族報酬を使うべき人・使わない方がいい人

家族報酬は「やるべき人がやればメリットが大きい制度」ですが
全員に向いているわけではありません

向いている人

次のようなケースでは向いていると言えます

  • 複数棟運営している
    業務量が明確にあり、報酬に合理性が生まれる
  • 家族が実務を本当に担当できる
    掃除・立ち会い・連絡窓口が実際にできるなら、税務署も納得しやすい
  • 記録・契約記録をきっちり整えられる
    家族報酬は ルールを守れる人 ほど武器になる制度

実際に仕事をしている客観性が高いので当然といえば当然です

向いていない人

裏を返せした次のようなケースでは向いていないと言えます

  • 1棟(1戸)だけ
    業務量が少なすぎて、報酬を支払う合理性が生まれにくい
  • 節税目的だけで考えている
    節税ありきの家族報酬は、調査でほぼ否認されてしまいます
  • 帳簿の管理がずさん
    記録を残せない人は、家族報酬とは相性が悪いです

まとめ

家族への管理報酬は
「正しくやれば経費になるしかし、間違えると高確率で否認される」
という非常にセンシティブな項目です

大事なのは節税できるかではなく「税務調査で堂々と説明できるか」です

サラリーマン不動産投資の節税では、税務リスクを最小化にする工夫が大切です
家族報酬は正しく運用すれば、手間と実益のバランスが良い節税術になります

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