はじめに
近年の金利上昇を受け、サラリーマン不動産投資家の中には
「このまま不動産投資を続けて本当に大丈夫なのか?」
と不安を感じている方も少なくありません
不動産投資は長期運用が前提である一方
ローン金利の変動は毎月の返済額・キャッシュフロー・融資条件に直接影響します
そのため、金利上昇は「いずれ考えればいい問題」ではなく
今のうちに向き合うべきリスクと言えます
一方で、実際には
「何を基準に判断すればいいのか分からない」
「何から手を付ければいいのか曖昧」
という理由で、対応を先送りしているケースも多いのが実情です

本記事では、金利上昇局面において不動産投資を見直す理由や数字で把握するリスクの正体、失敗例と成功例の違いを整理しながら、守り方について解説します
第1章:なぜ今「金利上昇」を前提に不動産投資を考える必要があるのか
まず押さえておきたいのは、金利が「一時的な変動」ではなく
投資環境そのものを左右する要素だという点です
金利は景気・金融政策・インフレなど複数の要因で動き
一度上昇局面に入ると、短期間で元に戻るとは限りません
不動産投資は数十年単位の運用になるため
「低金利が続く前提」で組んだ計画は脆くなりがちです
特にサラリーマン不動産投資は
- 本業の給与収入
- 金融機関からの融資
- 毎月のローン返済
この三つのバランスで成り立っています
金利が上昇すると、このバランスが崩れやすくなります
金利上昇によって生じる影響は、主に以下の三点です
- 返済額の増加
- キャッシュフローの悪化
- 金融機関の融資姿勢の変化
これらは連動して起こるため
「今は利回りが出ているから問題ない」という判断だけでは
将来のリスクを十分にカバーできません

金利上昇局面では、これまで通用していた判断基準が通用しなくなる可能性がある
という点を理解しておく必要があります
第2章:金利上昇が直撃する3つのポイントを整理する
金利上昇の影響を漠然と捉えていると、対応が遅れます
そこでここでは、サラリーマン不動産投資において
特に影響を受けやすい三つのポイントを整理します
毎月返済額とキャッシュフロー
金利が上がったからといって、
すべての物件で即座にキャッシュフローが赤字になるわけではありません
しかし、金利上昇局面では
物件ごとの「耐久力の差」が明確に表れます
返済額は固定費であり、家賃のように簡単に増やすことはできません
そのため、金利上昇によって返済額が増えると
キャッシュフローに与える影響は想像以上に大きくなります
結果として
- 余裕のあった物件は耐えられる
- ギリギリで回していた物件は一気に苦しくなる
という差が生まれます
ここを把握せずに放置することが、最も危険な状態です
融資条件・追加融資への影響
金利上昇局面では、金融機関の目線も変わります
具体的には、金融機関はこれまで以上に
- 金利水準
- 返済余力
- 返済比率
を厳しくチェックするようになります
その結果
- 追加融資が通りにくくなる
- 借換え条件が悪化する
- 融資期間が短縮される
といった影響が出る可能性があります
「今のローンが返せているから大丈夫」と考えるのではなく
次の融資・次の一手がどう見られるかまで意識することが重要です
物件価格と出口戦略
金利上昇局面では、物件価格の考え方も変わります
一般的に金利が上がると
- 利回り重視の傾向が強まる
- 低利回り物件の評価が下がりやすい
という傾向があります
これは、購入時だけでなく売却時の判断にも影響します
そのため
- 今後も保有し続けるのか
- どのタイミングで売却を視野に入れるのか
といった出口戦略を
金利環境を踏まえて考える必要があります
金利上昇は「今の収支」だけでなく
将来の選択肢そのものに影響する点を押さえておくべきです
第3章:金利上昇局面で必ず把握すべき「4つの数字」
金利上昇への備えは、「不安を感じるかどうか」ではなく
どこまで耐えられるかを数字で把握できているかで差が出ます
ここでは、最低限押さえておくべき四つの数字を整理します
現在の実効金利
まず確認すべきは、表面金利ではなく実際に適用されている実効金利です
- 変動金利の場合、当初優遇後の金利を正確に把握していないケースが多くあります
- 複数物件を保有していると、物件ごとに金利条件が異なることも珍しくありません
金利上昇局面では
「どの物件が、どの水準の金利で借りているか」を把握しない限り
優先順位を付けた対策は取れません
毎月返済額とキャッシュフロー余力
次に見るべきは、毎月の返済額そのものではなく
返済後にどれだけ余力が残っているかです
家賃収入 − 返済額 − 固定費 = 実質キャッシュフロー
ここにどれだけ余白があるかが「耐久力」になります
キャッシュフローがプラスであっても
余力が数千円〜数万円程度しかない場合
金利上昇時の吸収力は非常に弱くなります
金利+1%時の影響シミュレーション
金利上昇を想定する際は、次に何%になるかを
正確に当てる必要はありません
実務上は、金利が+1%上がった場合に
毎月返済額がいくら増えるか
キャッシュフローがどう変化するか
をシミュレーションしておくだけで十分です
この数字を事前に把握しておくことで
- どの物件が危険水域に入るのか
- どこまでなら耐えられるのか
が明確になります
返済余力の把握
最後に重要なのが「理論上の返済額」ではなく
実生活を含めた返済余力です
- 本業収入とのバランス
- 生活費・教育費などの固定支出
- 万一の空室・修繕が重なった場合の耐性
これらを踏まえて
- 数か月〜1年程度、厳しい状態でも耐えられるか
を確認しておくことが、守りの投資では不可欠です

金利上昇局面では、今いくら儲かっているかより「今いくら耐えられるか」
を数値で可視化することが最優先となります
第4章:実際に筆者がやった金利上昇への備え方
ここでは、筆者自身が金利上昇を意識して実際に行った対応について
判断プロセスとして整理します
全物件のローン条件をExcelで一覧化
まず行ったのは
保有するすべての物件について以下を一覧化することでした
- 借入金額
- 金利タイプ(固定・変動)
- 現在の実効金利
- 残債・残期間
- 毎月返済額
これにより、「どの物件が金利上昇に弱いか」が一目で分かるようになります
金利上昇時の返済シミュレーションを事前に実施
次に、金利が上昇した場合の影響を事前に計算しました
- 金利+0.5%
- 金利+1.0%
それぞれで返済額とキャッシュフローを算出し、
「どこから危険になるか」を把握しました
この作業を先にやっておくことで
金利が実際に上がった際にも冷静に対応できます
借換え・条件変更の可能性を金融機関にヒアリング
数字を整理した上で
金融機関に対して以下を確認しました
- 借換えの可能性
- 金利交渉の余地
- 固定化した場合の条件

重要なのは、必ずしも借換えを前提にしないことです
情報収集だけでも、判断材料として十分価値があります
「やらない判断」を含めた意思決定
最終的に筆者は、借換え自体は行わず、金利交渉のみという判断をしました
理由は
- 借換えコストに見合う改善が見込めなかった
- キャッシュフロー余力が十分あった
からです

金利上昇局面では、「動かない」「今は様子を見る」という判断も、
立派な戦略の一つです
第5章:金利上昇局面でよくある失敗例と成功例
最後に、金利上昇局面で差が出やすい
失敗パターンと成功パターンを整理します
失敗例
金利上昇に対応できなかったケースには、共通点があります
- 楽観的なシナリオだけでキャッシュフローを組んでいた
- 変動金利のリスクを理解しながら、特に対策を取らなかった
- 金利が実際に上がってから、慌てて行動した
これらはいずれも「事前に数字で確認していなかった」ことが原因です
成功例
一方、影響を抑えられた投資家には次の特徴があります
- 余裕を持ったキャッシュフロー設計で金利上昇を吸収
- 早い段階で借換えや条件整理を検討
- 無理に攻めず、投資スピードを落として守りに転じた
共通しているのは
環境変化を前提に、先に動いていたことです
金利上昇局面では
派手な成功よりも「大きな失敗をしないこと」が結果につながります
第6章:金利上昇局面での守りの戦略チェックリスト
金利上昇局面で重要なのは
「何か特別な対策を打つこと」ではありません
現状を前提に、守りが崩れないかを一つずつ確認することです
ここでは、実務的に確認しておきたい守りの戦略をチェックリスト形式で整理します
固定・変動の見直し
まず最初に確認すべきは、金利タイプの整理です
- すべて変動金利になっていないか
- 固定期間終了後の条件を把握しているか
重要なのは、「固定が正解」「変動が危険」と単純に決めつけないことです
キャッシュフロー余力と残債、保有期間を踏まえたうえで
自分の投資スタイルに合っているかを確認します
返済期間の調整
次に検討したいのが、返済期間の設計です
- 返済期間を短くしていないか
- 毎月返済額が過度に重くなっていないか
金利上昇局面では、「総返済額を減らす」よりも
毎月の耐久力を高める設計が有効なケースもあります
返済期間の見直しは
キャッシュフローを守るための有力な選択肢です
キャッシュフロー余力の確保
守りの要となるのが、キャッシュフロー余力です
- 空室・修繕が重なっても耐えられるか
- 金利がさらに上がっても即赤字にならないか
ここで重要なのは、「黒字か赤字か」ではなく
どれくらいの余白があるかです
余力があれば、金利上昇は
「対応できるリスク」に変わります
投資ペースの再設計
金利上昇局面では
無理に投資スピードを維持する必要はありません
- 買い増しを一時的に止める
- 検討基準を厳しくする
こうした判断は、後退ではなくポジション調整です
守りを固める期間を設けることで
次の局面で再び動きやすくなります
本業収入とのバランス確認
サラリーマン投資家にとって
本業収入は最大の安全装置です
- 本業収入でどこまでカバーできるか
- 生活費と投資のバランスが崩れていないか
金利上昇時には、不動産単体ではなく家計全体での耐久力を確認することが重要です
第7章:金利上昇は「撤退サイン」ではなく戦略分岐点
金利が上がると
「もう不動産投資は厳しいのではないか」と感じる方もいます
しかし、金利上昇は必ずしも撤退を意味しません
金利上昇は即撤退ではない
金利上昇は
投資環境が変わったことを示すサインにすぎません
- 続ける
- 一時的に守る
- 攻めを止める
いずれも正解になり得ます
無理に攻めない判断も投資戦略
何もしない、買わない、動かない
これらは消極的に見えて
実は高度な意思決定です
金利上昇局面で生き残る投資家ほど
「やらない判断」を明確に持っています
環境変化に合わせた柔軟なポジション調整
長期で残る投資家に共通するのは
- 環境を嘆かない
- ルールを変える
- ポジションを調整する
という姿勢です
金利上昇は
投資家の柔軟性が試される局面とも言えます
まとめ
金利上昇局面では、「感覚」ではなく「数字」で守ることが何より重要です
見るべき指標は、返済額・キャッシュフロー余力・融資耐性の3点であり
失敗の原因は楽観的な放置、成功の要因は事前の可視化と準備にあります

金利上昇はリスクであると同時に戦略を見直す好機であり、本記事の視点を活用すれば、サラリーマン不動産投資でも冷静に守りを固め、次の局面に備えた判断ができるでしょう

