はじめに
年収もそこそこある物件の収支も悪くない、それなのに、なぜか融資が通らない
不動産投資を検討していると、こうした壁に直面するケースがあります
銀行からの回答は「今回は見送りです」という一言だけで
具体的な理由は教えてもらえず
結果として、何が問題だったのか分からないまま、不安だけが残るケースは少なくありません
こうした融資否決の背景に、本人がほとんど意識していない
「個人信用情報」が関係していることがあります
多くの人は「ブラックでなければ大丈夫」「延滞さえしていなければ問題ない」と考えがちですが
銀行の見方はそれほど単純ではありません

本記事では、CIC・JICCとは何か、銀行は信用情報のどこを見ているのか、不動産投資ローンへの影響、事前に取る対策について解説していきます
第1章:なぜ不動産投資で「個人信用情報」が重要になるのか
不動産投資ローンというと、物件の担保価値や収益性ばかりが注目されがちです
しかし実際の審査では、物件を見る前に「人」を見られているという点を理解しておく必要があります
不動産投資ローンでも、最初に見られるのは「人」
銀行の融資審査は、必ず「この人にお金を貸して大丈夫か」という判断から始まります
その判断材料として、最初に機械的にチェックされるのが個人信用情報です
ここで引っかかると、いくら物件の条件が良くても、そもそも土俵に上がれません
銀行が信用情報で確認している3つの観点
銀行は信用情報を通じて、主に次の点を確認しています
- 返済能力
年収や属性だけでなく、既存の借入がどの程度あるか、無理のない返済構造かを見ています - 返済姿勢
過去に約束どおり返済してきたか、遅れが常態化していないかといった「姿勢」の部分です - 過去の金融取引履歴
クレジットカード、ローン、分割払いなど
これまでの金融行動の積み重ねがそのまま記録されています
これらはすべて、申込書の自己申告ではなく
信用情報機関のデータで客観的に確認されます
物件評価が良くても「信用情報」で止まる
不動産投資では、「物件が良ければ融資は出る」というイメージを持たれがちです
しかし実際には、信用情報に問題があると、物件評価以前に否決されることが珍しくありません
銀行側からすれば、返済してくれない可能性がある人に
いくら良い担保があっても貸したくないというのが本音だからです
「知らない」「見たことがない」こと自体がリスクになる理由
多くの投資家が、信用情報を一度も開示せずに融資に臨んでいます
しかし、自分の信用情報を把握していない状態で申し込むことに
大きなリスクがあります
- 何が問題になるか分からない
- 銀行から指摘されても説明できない
- 否決理由が分からず、同じ失敗を繰り返す
この状態を避けるためにも、信用情報は「結果を受け止めるもの」ではなく
事前に把握し、戦略的に管理するものとして考える必要があります
第2章:CIC・JICCとは何か|まず押さえる基本構造
個人信用情報を語る上で、必ず登場するのが「CIC」と「JICC」です
まずは、それぞれが何者で、どのような役割を担っているのかを整理しましょう
CICとは何か
CICは、正式名称を株式会社シー・アイ・シーといい
主にクレジットカード会社や信販会社が加盟している信用情報機関です
クレジットカードの利用状況や分割払い、割賦契約など
日常的な支払い行動が多く登録されています
JICCとは何か
JICCは、正式名称を株式会社日本信用情報機構といい
消費者金融や一部の金融機関が主に加盟しています
カードローンやキャッシングなど、いわゆる
「ローン系」の情報が多く集まる傾向があります
CICとJICCの役割の違い
両者は似た存在に見えますが、加盟している金融機関や得意分野が異なります
- CIC:クレジット・割賦取引に強い
- JICC:ローン・キャッシング情報に強い
そのため、どちらか一方だけを見ても、全体像を把握できないケースがあります
銀行・信用金庫・ノンバンクはどこを参照しているのか
金融機関によって、参照している信用情報機関は異なります
- メガバンク・地方銀行:CIC・JICCの両方を見るケースが多い
- 信用金庫・信用組合:どちらか一方のみのケースが多い
- ノンバンク:JICC中心の場合が多い
金融機関はどこを見ているのかによって
評価ポイントが変わる点は重要です
登録されている情報の種類
信用情報機関には、主に次のような情報が登録されています
- クレジット契約の内容
- ローンの契約・残高
- 毎月の返済状況
- 延滞・異動といったネガティブ情報
これらは契約期間中だけでなく、完済後も一定期間保存されます
「両方見る金融機関」と「片方だけ見る金融機関」がある点に注意
投資家が注意すべきなのは、「CICだけ見て安心」「JICCは見なくていい」
といった考え方が通用しないことです
金融機関によっては両方を突き合わせて確認するため
片方に問題があるだけでも融資条件が悪化、もしくは否決というケースもあります
第3章:信用情報で実際に見られている重要ポイント
CICやJICCを開示すると、多くの人が「情報量の多さ」に戸惑います
しかし、銀行が見ているポイントは無制限ではありません
実際に評価に直結する重要項目はほぼ決まっています
ここでは、融資判断に特に影響しやすい3つのポイントに絞って解説します
返済状況($マーク・Aマーク)の意味
信用情報で最も分かりやすく、かつ厳しく見られるのが「返済状況」です
CICでは、毎月の返済状況が記号で一覧表示されます
$=正常、A=延滞
- $マーク:請求どおり、期日どおりに返済されている
- Aマーク:未入金、または期日を過ぎた入金があった
このルール自体は単純ですが、銀行は直近24か月程度の並び方を重視します
$が並んでいるか、Aが点在しているかで、返済姿勢の評価は大きく変わります
軽微な遅れでもどう評価されるか
「数日遅れただけ」「引き落とし口座に入金し忘れただけ」と感じるケースでも
記録上はAマークとして残ることがあります
銀行は、その理由までは信用情報から分かりません
そのため、意図せず発生した遅れであっても評価上はマイナス要素として扱われます
特に注意すべきなのは、Aが1回あると即アウトではなく
他の条件と組み合わせて総合評価されるという点です
とはいえ、返済状況がきれいであるほど、融資条件が有利になるのは間違いありません
残債・借入件数の見られ方
次に見られるのが、現在どれだけ借りているか、そして何件借りているかです
ここで多くの人が誤解しているのが、「金額が少なければ問題ない」という考え方です
金額よりも「件数」が問題になるケース
銀行は、借入金額だけでなく、借入件数は管理能力として評価します
- 少額でも件数が多い
- 複数のカードローン・分割払いが並んでいる
こうした状態は、「お金の管理が細切れになっている」と見られやすく
不動産投資ローンではマイナス評価になりがちです
少額ローン・リボの影響
特に注意したいのが、次のような借入です
- スマホ端末の分割払い
- 家電や家具の分割購入
- クレジットカードのリボ残高
本人の感覚では「生活上の支払い」に近くても
信用情報上はれっきとした借入として扱われます
不動産投資に直接関係のない借入が多いほど
「本業以外でキャッシュフローを圧迫している」と判断されやすくなります
異動情報・延滞履歴の扱い
最もインパクトが大きいのが、異動情報や長期延滞の履歴です
これは、いわゆる「ブラック」と呼ばれる状態に近いものです
何年残るのか
異動情報(長期延滞、代位弁済、強制解約など)は
完済後も5年程度は信用情報に残るのが一般的です
この期間中は、多くの金融機関で融資のハードルが一気に上がります
一度あるとどう影響するか
重要なのは、
「過去に一度でもあった」という事実自体が評価対象になる点です
完済していても
「過去に返済トラブルがあった人」として見られるため、
- 金利が上がる
- 融資額が抑えられる
- そもそも受付不可になる
といった影響が出る可能性があります
そのため、異動情報がある場合は
隠すのではなく「どう説明するか」が重要になります
第4章:信用情報が融資条件にどう影響するのか
信用情報の影響は、「通るか・通らないか」だけではありません
多くの場合、条件の差として表面化します
ここでは、どのような形で数字に反映されるのかを整理します
金利への影響
信用情報が良好な場合
銀行は「リスクが低い」と判断し、比較的低い金利を提示しやすくなります
一方で、
- Aマークが散見される
- 借入件数が多い
といった場合、リスクプレミアムとして金利が上乗せされることがあります
幅はありますが、約1.5%~4.0%程度まで上昇することもあります
融資額・融資比率への影響
同じ物件でも、
- フルローンに近い条件が出る人
- 自己資金を求められる人
に分かれることがあります
この差を生む要因の一つが、信用情報です
返済能力に余裕がないと判断されると、融資額は抑えられます
一般に融資額は年収の5~8倍程度まで融資されるケースが多いです
例えば年収500万円の人の場合、信用情報が良ければ、約4000万円~7,500万円程度まで
融資は可能ですが、信用情報の影響で、3000万円以下に制限されるといったケースがあります
保証会社付き融資での判断
保証会社が入る融資では
銀行とは別に、保証会社独自の審査が行われます
この場合、信用情報の評価はさらにシビアになり
小さなマイナス要素でも融資審査が否決されてしまうことがあります
「通る/通らない」だけでなく条件差として現れるケース
結果として
- 融資は通ったが金利が高い
- 融資額が想定より少ない
- 複数の銀行で条件に大きな差が出る
といった現象が起きます
この違いを「金融機関の相性」と片付ける前に
信用情報がどう見られているかを疑う価値は十分にあります
第5章:実際に筆者がやった信用情報の確認と融資対策
ここからは、筆者自身が不動産投資の融資に臨む際に、実際に行った信用情報対策について紹介します
融資前にCIC・JICCを開示した理由
理由は単純で
個人的に初めての分野で興味があったことと、否決理由が分からない状態で動きたくなかったからです
事前に把握しておけば
- 問題があれば対策できる
- 問題がなければ自信を持って臨める
というメリットがあります
実際に開示して気づいた点
開実際に自身の信用情報を確認してみたところ、特に問題となるような記録はありませんでした
ただ、開示結果を丁寧に見る中で、もし事前確認をしていなかったら気づかなかったかもしれない注意点も意識するようになりました
たとえば、同時期に情報交換していた投資仲間の中には
少額ではあるものの件数の多い借入が原因で審査に苦戦したという例もありました
本人に悪意はなくても、銀行側から見れば「管理が雑」「資金調達が多岐にわたる」といった印象を与えてしまうことがあるそうです
この話を聞き、自分も「見た目の整理」は大切だと感じました
筆者自身の開示結果では、しばらく使っていないクレジットカードが数枚あったため
それを機に整理を進めました
こうした小さな改善でも、信用情報全体の印象は明るく見せることができます
不要な借入を整理して見た目を改善
そこで次のような対応を考えました
- 不要なカードを解約
- 残高のある少額ローンを完済
「スコアを上げる」というよりも
「余計な借入をなくして分かりやすい状態にする」という感覚です
こうした準備をしておくだけで、面談時の印象は大きく変わります
銀行面談で意識した説明の仕方
過去の借入について聞かれた際は
- 事実を隠さない
- すでに整理済みであること
- 現在は健全な状態であること
を、簡潔に説明しました
信用情報と説明内容が一致していると、
銀行側の印象は明らかに良くなります
結果としてスムーズな審査へ
結果的に、追加質問も少なく、審査期間も短縮されました
条件交渉もスムーズに進み、融資全体がストレスなく進行した印象です
信用情報は、魔法のように結果を変えるものではありません
しかし、知らずに足を引っ張られる要因を事前に潰しておくことは、確実に効果があります
筆者自身、経験を通して「信用情報の確認は、不動産投資の融資準備で最も手軽かつ効果の高い対策」だと実感しました
第6章:信用情報を理由に起きやすい失敗例と成功例
信用情報は「見えにくい」要素であるがゆえに
不動産投資の融資では、同じような失敗と成功が繰り返されています
ここでは、実際によくあるパターンを整理し
何が分かれ目になるのかを確認しておきましょう
失敗例① 信用情報を見ずに融資申込みを繰り返した
最も多い失敗例です
自分の信用情報を一度も確認しないまま、複数の銀行に申込みを行うケースです
否決が続くと、「銀行との相性が悪かった」と考えがちですが
実際には同じ信用情報を見て、同じ判断をされているだけということも少なくありません
結果として
- 否決履歴が増える
- 精神的な負担が増す
- 次の一手が見えなくなる
という悪循環に陥ります
失敗例② クレジット・リボを軽視していた
次に多いのが、クレジットカードやリボ払いを「生活費の延長」と考えてしまうケースです
本人の感覚では少額でも
- 借入件数が増える
- 毎月の返済枠が圧迫される
ことで、信用情報上の評価は確実に下がります
「不動産投資とは関係ないから問題ない」という認識が
融資の場では通用しない点に注意が必要です
失敗例③ 延滞履歴を説明せずに面談した
過去に延滞があるにもかかわらず
銀行から聞かれるまで何も説明しないというのも、評価を落としやすい行動です
銀行側からすると、
- なぜ説明しないのか
- 事実を把握していないのか
- 意図的に隠しているのか
と、不要な疑念を持たれてしまいます
一方で、信用情報を正しく扱うことで、融資を前向きに進められたケースも多くあります
成功例① 事前に信用情報を把握して対策
成功している投資家に共通するのは
融資申込み前に必ず信用情報を確認している点です
事前に把握していれば、
- 問題点を整理できる
- 影響度の大小を判断できる
- 取るべき対策を選べる
という状態で融資に臨めます
成功例② 借入整理後に再チャレンジ
信用情報に致命的な問題がなくても
「見た目」を整えるだけで評価が改善するケースがあります
- 不要な借入を完済
- 使っていないカードを解約
- 借入件数を減らす
こうした整理を行った上で再チャレンジすることで、
同じ銀行でも判断が変わることは珍しくありません
成功例③ 銀行に納得感のある説明ができたケース
過去の延滞や借入についても
- 事実関係を整理し
- すでに解消していること
- 現在は健全な状態であること
を簡潔に説明できると、銀行側の受け止め方は大きく変わります
信用情報と説明内容が一致していることが
信頼感につながる重要なポイントです
第7章:信用情報は「消すもの」ではなく「管理するもの」
信用情報というと、「ブラックを消したい」「悪い履歴を消去したい」と考えがちです
しかし、不動産投資の実務では、その考え方自体がリスクになります
ブラックかどうかの二択思考は危険
信用情報は
- 良いか
- 悪いか
という単純な二択では評価されません
多くの場合は、
- どの程度リスクがあるか
- そのリスクをどう管理しているか
という連続的な評価が行われています
信用情報は投資家としての履歴書
信用情報は、金融機関から見た
「お金に関する履歴書」のようなものです
過去の取引履歴、返済姿勢、管理能力が、
すべて時系列で蓄積されています
これを意識的に整えていくことは、
投資家としての信用力を高める行為そのものです
定期的なチェックの重要性
信用情報は、一度見て終わりではありません
- 新たな借入
- クレジットの利用状況
- 完済や解約
によって、内容は変化します
定期的にチェックする習慣を持つことで、
知らないうちに評価を下げてしまう事態を防げます
融資戦略に組み込むという考え方
信用情報は、融資直前に慌てて確認するものではなく
融資戦略の一部として管理するものです
物件選びや収支計画と同じレベルで
信用情報を意識できるようになると、融資の再現性は大きく高まります
まとめ
不動産投資において、個人の信用情報は融資を受けるうえでの
「出発点」とも言える重要な要素です
CICやJICCといった信用情報機関の仕組みを理解すれば、「なぜ融資が通らないのか」「なぜ金利や条件に差が出るのか」といった疑問の答えが見えてきます
特に、「返済状況」「借入件数」「異動情報」 の3つは注目すべきポイントです
融資でつまずく人の多くは、自分の信用情報を「見ない・知らない」ままにしている点が共通しており、成功している人は「自分の情報を把握し、説明できる」ことが特徴です

信用情報に振り回されることなく、融資で不利にならないための管理・対策ができるようにしっかり学んで対応していきましょう

