土地と建物の取得簿価はどう決める?実際の明細書と税務上の注意点を解説

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はじめに

不動産を購入した際に、土地と建物の取得簿価(取得価額)をどう分けるかに悩んだことはないでしょうか

「土地」と「建物」の内訳は、単なる参考数値ではなく、減価償却や将来の売却時の課税計算に大きく影響する重要な要素です

しかし実際には、

  • 売買契約書や重要事項説明書に明確な内訳が記載されていない
  • 記載があっても「消費税額」しか書かれていない

といったケースは珍しくありません

本記事では、明細書がある場合・ない場合・消費税額しかない場合の3パターンについて 「土地と建物の取得簿価の決め方」を解説します

取得簿価とは何か

まず、「取得簿価」とは、不動産を購入した際に帳簿上に登録する価値(取得価額)のことです この取得価額を「土地」と「建物」に按分(あんぶん)し、それぞれの簿価として記録します

ポイントは次のとおりです。

  • 減価償却の対象になるのは建物(設備含む)のみで、土地は対象外
  • 将来売却する際の譲渡所得計算にも使われるため、根拠が一貫していることが大切
  • 税務署に説明できる明確な資料(根拠)を残しておくことが重要

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明細書に「土地・建物」価格が記載されている場合

最もシンプルで安全なのは、明細書や契約書に土地・建物の価格が明示されているケースです この場合は、明細書などの書類に記載されている金額をそのまま簿価として採用できます

たとえば以下のような資料が該当します

  • 売買契約書
  • 重要事項説明書
  • 銀行融資の明細書
  • 不動産会社の請求書

「土地」「建物」の金額が明記されていれば、税務上も最も客観的で安全な根拠として扱われます

そのまま建物部分を減価償却の基礎とし、残りを土地として仕訳すれば問題となることは無いでしょう

「消費税額」から建物価格を逆算する方法

明細書には「土地・建物」の価格は書かれていないが、「消費税額」だけ記載されているというケースがあります

実際、私の所有する物件もいくつかこのケースに当てはまりました

実はこの場合でも、建物価格を逆算して特定することが可能です
土地の取引は非課税であり、消費税が課されるのは建物部分のみだからです

したがって、次の式で建物価格を求められます。

建物価格 = 消費税額 ÷ 消費税率

たとえば、明細書に「消費税額 1,000,000円」と書かれていた場合、
消費税率が10%なら建物価格は 1,000,000 ÷ 0.10 = 10,000,000円 となります

消費税率消費税額建物価格(逆算値)
10%1,000,000円10,000,000円
8%800,000円10,000,000円
5%500,000円10,000,000円

このようにして算出した建物価格を「建物簿価」として減価償却の基礎にできます 総額から建物価格を引けば、残りが土地価格となります

この方法は、明細書に明確な按分がない場合でも、消費税額という税務上の客観的数値を根拠にできるため、 実務上も非常に有効な手段です

明細書も「消費税額」も記載がない場合の「按分」方法

契約書にも明細書にも按分がなく、消費税額の記載もないケース この場合は、第三者が確認可能な根拠をもとに自ら按分を行う必要があります

代表的な按分方法は次の3つです

方法根拠メリット留意点
① 固定資産税評価額按分法各自治体の評価証明書公的根拠があり、税務上の安全性が高い評価額が古く、市場価格との乖離がある場合も
② 国税庁の建物価格割合を参照「建物比率表」や「標準建築価格表」エリア別・構造別で目安がわかる個別の事情を反映しづらい
③ 簡易法(7:3または8:2)実務で慣例的に使用される按分計算が簡単で汎用性が高い根拠が薄く、売却時の税務リスクあり

このように、根拠の強い順に①→③となります 税務上の安全性を優先するなら、固定資産税評価額を使う方法が最もおすすめと考えられます

設備と躯体の分け方(減価償却上のポイント)

建物価格が算出できたら、次に重要なのが「建物(躯体)」と「設備」に分ける作業です

「建物(躯体)」と「設備」では減価償却の耐用年数が異なるため、税務上の費用化スピードに差が出るからです

一般的な目安は以下のとおりです

  • 躯体(鉄筋コンクリート造など):47年償却
  • 設備(給湯器、エアコン、エレベーターなど):15年償却

実務上よく使われる簡易法「7:3」

明細書に設備内訳がない場合、実務では次のように建物:設備=7:3の簡易比率で処理することが多いです たとえば、建物簿価が1,000万円なら下記のように按分します

区分割合金額耐用年数
躯体70%700万円47年
設備30%300万円15年

この方法は、建物明細がない場合の実務的な代替手段として広く採用されています
もし不動産会社からエアコンや給湯器などの設備明細書が提供されている場合は、明細書の額を優先しましょう

設備を多めに計上するメリットと注意点

設備部分を多めに計上すると、償却期間が短くなり、初期数年の減価償却費が増えるため、税務上の費用化スピードを早める効果があります

一方で、将来の売却時には「帳簿価額」が小さくなるため、譲渡益が大きくなるリスクもある点には注意が必要です

税務署・会計処理上の注意点

土地・建物・設備の按分方法は、後から説明できるように記録を残すことが非常に重要です
とくに不動産投資の場合は、税務署から根拠を求められるケースもあります

以下のポイントを押さえておきましょう

  1. 根拠書類を必ず保存する
     契約書・見積書・評価証明書など、按分比率の算定根拠になる書類はすべて保管しましょう
  2. 申告後に比率を変更しない
     いったん申告した按分比率を後で変えると、修正申告が必要になる場合があります
  3. 一貫性を保つ
     同じ物件を複数年に分けて購入・改修した場合などは、過去の按分基準を引き継ぐことが大切です

税務上の「説明可能性」を確保しておくことが、後々のトラブル防止につながります

実例:新宿区の区分マンションの場合

私が所有している新宿区の新築区分マンションを例にご紹介します

契約書の明細には、以下のような記載がありました

  • 土地:約1,500万円
  • 建物:約1,500万円
  • 合計:約3,000万円

減価償却の対象となるのは建物部分の1,500万円です 私は躯体と設備を次のように7:3で按分しました。

区分按分比率金額耐用年数
躯体70%約1,100万円47年
設備30%約400万円15年

初年度の減価償却費は約50万円が計上できました
仮に設備部分を正確に拾い出そうとすると、メーカー見積や施工内訳書などが必要になりますが、 簡易法を使うことで現実的な範囲で合理的な処理が可能になります

ケースから学ぶ3つのポイント

  1. 明細書に記載がある場合は最優先で採用する
     → 税務署からも認められやすく、後からの修正が不要です
  2. 根拠がない場合は、固定資産税評価や国税庁資料を使う
     → 第三者が確認可能な公的データを利用すれば、信頼性が上がります
  3. 売却時を見越して、按分根拠を保存する
     → 数年後の譲渡時に、「当時どのように簿価を決めたか」を説明できるようにしましょう

まとめ:簿価の根拠は「今」決めておく

土地と建物の簿価は、購入直後のタイミングでしか正確に決められません
あとから修正するのは難しく、根拠を失うと税務上の整合性が取れなくなります

曖昧なままだと、減価償却や譲渡所得の計算がズレたり、後年の税務調査で説明が困難になります

購入時点で 「どの資料をもとに、どう按分したか」を明確に整理し、「自分の帳簿を説明できる状態」を作っておくことが何よりも重要です

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