はじめに
不動産投資では金利と返済期間と融資比率(LTV)がキャッシュフローや利回りを大きく左右します
同じ物件を購入しても、これらの条件設定が異なるだけで、手元に残る利益は大きく変わります
一見、低金利・長期間・高融資比率のローンが有利に見えますが、実際には「金利上昇リスク」や「過剰なレバレッジ」によって想定利回りが崩れるケースもあります
サラリーマン投資家にとっての目的は、「見かけの利回り」より「実質的に残る利益」を最大化することです

本記事では、金利・返済期間・融資比率を変えたときに「利回りがどう変化するのか」を、シミュレーションを交えて解説します
金利が利回りに与える影響
金利が上がると返済額はどう変わるか?
金利は融資条件の中でも最も直接的にキャッシュフローへ影響します
たとえば、3,000万円を35年ローンで借りた場合、金利1.2%と2.0%では月々の返済額が約1.2万円以上変わります
| 金利 | 月々返済額(概算) | 年間返済額 | 総返済額(35年) |
|---|---|---|---|
| 1.2% | 約87,000円 | 約104万円 | 約3,640万円 |
| 2.0% | 約99,000円 | 約119万円 | 約4,180万円 |
金利が上がると、キャッシュフロー(手残り)は圧迫され、総返済額も増加します

特に変動金利型ローンの場合、金利上昇局面では利益構造が一気に崩れるリスクがあります
固定金利型と変動金利型の特徴と選び方
固定金利型と変動金利型を比べてみるとこのようになります
| 項目 | 固定金利型 | 変動金利型 |
|---|---|---|
| 金利水準 | やや高め(例:1.5〜2.0%) | 低め(例:0.4〜1.0%) |
| メリット | 返済額が安定、長期計画が立てやすい | 低金利局面では有利 |
| デメリット | 初期金利が高くキャッシュフローが減る | 金利上昇リスクあり |
| 投資家向き | 長期保有・安定志向 | 短中期・高リスク許容型 |

不動産投資では、変動金利型で低金利を活かす戦略が一般的ですが、金利上昇に備えて繰上返済余力や予備資金を確保しておくことが重要です
返済期間の設定と利回りの関係
返済期間を長くするメリットとデメリット
返済期間を長く設定すると、1回あたりの返済額が減り、毎月のキャッシュフローが改善します
しかし、その分、支払総額(利息負担)は増えます
| 返済期間 | 月々返済額(概算) | 総返済額 |
|---|---|---|
| 20年 | 約138,000円 | 約3,320万円 |
| 35年 | 約99,000円 | 約4,180万円 |
月々の負担は軽くなるが、総利息は約860万円増加します

キャッシュフローを取るか、総返済コストを取るかのバランスが重要です
返済期間と投資戦略を整合させる
たとえば、
- 出口戦略が10年後の売却なら、短期返済で元本を減らし、売却時の残債を抑える方が安全
- 長期保有で家賃収入を得る目的なら、長期ローンで月々の手残りを厚くする方が有効

返済期間の設定は単なる支払いスケジュールというより「出口設計の一部」として考える必要があります
融資比率(LTV)とリスク・利回りの関係
LTVとは?基本定義と計算式
LTV(Loan To Value)は、物件価格に対して融資額が占める割合のことを指します、計算式は次の通りです
LTV = 融資額 ÷ 物件価格 × 100(%)
たとえば、5,000万円の物件に4,000万円の融資を受ける場合、LTVは80%です
LTVが高いほど自己資金が少なくて済み、レバレッジ効果(自己資金に対する収益率の上昇)が得られます
高LTVローンが利回りに与える影響
高LTVローンは一見有利に見えます
たとえば、自己資金1,000万円+借入4,000万円で年200万円の収益がある場合:
自己資金利回り(ROE)= 200万円 ÷ 1,000万円 = 20%
しかし、LTVを下げて自己資金を2,000万円に増やすと:
ROE= 200万円 ÷ 2,000万円 = 10%

高LTVではレバレッジが効いて利回りが上昇しますが、同時に返済負担、金利上昇時の耐性低下などのリスクも高まります
金融機関が重視するLTVの目安
金融庁のガイドラインによると、投資用不動産向け融資ではLTV 80%以下が一般的な安全水準とされています
90%を超える高LTVローンは、金融機関から「過剰融資」「返済余力不足」と見なされる可能性があり、融資審査で不利に働く場合もあります

サラリーマン投資家としては、借りられる最大額より「返せる範囲のLTV」を意識して設定することが重要です
条件を変えたときの利回りシミュレーション
ここでは、同じ5,000万円の投資用物件を購入したケースを想定し、金利・返済期間・融資比率(LTV)を変化させた3パターンでキャッシュフローと利回りを比較してみましょう
前提条件:
- 想定家賃収入:年間360万円(満室時)
- 管理費・修繕費・固定資産税など:年間60万円
- 手取り家賃収入:年間300万円
- 物件価格:5,000万円
条件パターン1:金利低・返済長・LTV高(レバレッジ重視)
- 金利:1.0%
- 返済期間:35年
- LTV:90%(借入4,500万円・自己資金500万円)
月々返済:約128,000円/年間返済:約154万円
年間手取りキャッシュフロー:約146万円
自己資金利回り(ROE)
= 146万円 ÷ 500万円 = 29.2%
特徴とリスク
- レバレッジ効果により高いROEを実現
- ただしLTVが高く、金利上昇や空室による返済リスクが大きい
- 売却時に価格下落があると、残債が物件価格を上回る“オーバーローン”状態になる可能性も
条件パターン2:金利中・返済中・LTV中(バランス型)
- 金利:1.5%
- 返済期間:25年
- LTV:75%(借入3,750万円・自己資金1,250万円)
月々返済:約150,000円/年間返済:約180万円
年間手取りキャッシュフロー:約120万円
ROE
= 120万円 ÷ 1,250万円 = 9.6%
特徴とリスク
- 金利・返済期間・LTVすべて中間のバランス型
- レバレッジは効きすぎず、安定した返済が可能
- 金利上昇時の影響も限定的で、長期的に安心感のあるプラン
条件パターン3:金利高・返済短・LTV低(安全重視)
- 金利:2.0%
- 返済期間:15年
- LTV:60%(借入3,000万円・自己資金2,000万円)
月々返済:約193,000円/年間返済:約232万円
年間手取りキャッシュフロー:約68万円
ROE
= 68万円 ÷ 2,000万円 = 3.4%
特徴とリスク
- 返済期間が短く、総利息を抑えられるため返済完了後の資産積み上げ効果が高い
- キャッシュフローは小さいが、金融機関からの信用を得やすく、将来の追加融資にも有利
- 低LTVにより金利上昇や空室への耐性が高い
各パターンの比較まとめ
| 項目 | パターン1 (レバレッジ型) | パターン2 (バランス型) | パターン3 (安全型) |
|---|---|---|---|
| 金利 | 1.0% | 1.5% | 2.0% |
| 返済期間 | 35年 | 25年 | 15年 |
| LTV | 90% | 75% | 60% |
| 自己資金 | 500万円 | 1,250万円 | 2,000万円 |
| 年間返済額 | 約154万円 | 約180万円 | 約232万円 |
| 年間手残り | 約146万円 | 約120万円 | 約68万円 |
| ROE | 約29.2% | 約9.6% | 約3.4% |

レバレッジを高く取ると表面利回り(ROE)は高くなりますが、リスクも比例して上昇します、「安定的に返済できる条件」かが長期的には成功の鍵です
不動産投資における条件設計の注意点
金利交渉・返済方式・繰上返済オプションを活用する
同じ物件・同じLTVでも、金融機関との交渉次第で金利が0.1〜0.3%変わることがあります
また、「元利均等」「元金均等」「ボーナス併用」など返済方式を工夫することで、
キャッシュフローを改善できる場合もあります
さらに、好調時には一部繰上返済を行い、利息負担を減らす戦略も選択肢のひとつです
返済期間は「出口戦略」と整合させる
たとえば、10年後に売却する予定なら、10年後の残債が想定売却価格を下回るように返済期間を設計する必要があります
返済期間を長く取りすぎると、売却時に残債が多く残り、手元に残る売却益(キャピタルゲイン)が減少します
LTVを抑えるための自己資金戦略
頭金を多く入れるほど返済は安定しますが、自己資金を入れすぎると投資効率(ROE)が低下します
したがって、「生活防衛資金+予備資金」を確保したうえで、60〜80%LTVの範囲を目安に設定するのが現実的です
想定外リスク(金利上昇・空室)を織り込む
金利上昇や空室率悪化は、利回りを下げる最大の要因です
購入前に、「金利が+0.5%上昇した場合」「稼働率が90%に落ちた場合」などを試算し、安全マージンを持った資金計画を立てておくことが重要です
まとめ:最適な条件設計で見える利回りを作る
不動産投資の収益性を決めるのは、物件そのものだけではなく、「借入条件(金利・返済期間・LTV)」という設計の精度です
条件設計を誤ると、同じ物件でも手元に残る利益は数十万円単位で変わり、見た目の利回りと実際の利回りに大きなギャップが生まれます
購入前には必ず次のシミュレーションを行うようにしましょう:
- 金利が上がったらどうなるか
- 返済期間を短くしたらキャッシュフローはどう変わるか
- LTVを下げるにはどれだけの自己資金が必要か

検証したうえで、自分にとって長く続けられる利回り設計を作ることが、安定した不動産投資の第一歩になるでしょう
参考資料:金融庁「銀行の不動産関連エクスポージャーに関する標準的手法」

