はじめに
不動産投資ローンの審査では、「どんな物件か」よりも「どんな投資家か」が重視される傾向があります
銀行は融資判断の際に、返済能力・信用力・経営姿勢を数字と履歴から見極めます
中でも特に重視されるのが、 「返済実績」、「属性」、「決算書」の3つの評価軸です
これらの要素を理解して準備することで、融資可否や条件(金利・期間・LTVなど)を大きく左右することができます

本記事では、それぞれの評価ポイントを詳しく解説し、銀行に「貸したくなる投資家」になるための視点を紹介します
返済実績:過去の返済履歴が審査で持つ意味
銀行がチェックする「返済実績」とは?
返済実績とは、これまでのローン返済の履歴を示すもので、銀行にとって「信用力の証明」です
具体的には、以下の点が確認されます
- 既存ローンの返済状況(延滞の有無)
- 完済実績(きちんと返済し終えた経験)
- 借入件数や残債のバランス
- 信用情報機関(CIC・JICCなど)での履歴

銀行は「過去にしっかり返してきた人は、今後も誠実に返す」と考えるため、返済実績の良し悪しは審査において非常に強い影響を持ちます
「1件目の返済が順調」な投資家が有利な理由
1棟目・1室目のローンが順調に返済されている投資家は、「貸しても安心」と見なされ、2件目以降の融資がスムーズになります
特に、返済比率(DSCR)や自己資本比率が健全な状態で維持されていることが確認できると、
金融機関の評価は一段上がります
返済比率(DSCR)についてはこちら


返済が遅延していたり、借入残高が高すぎる場合は、たとえ新しい物件が高収益でも、融資枠が抑えられるリスクがあります
返済実績を改善・提示するための対策
- 延滞や遅延がある場合:信用情報を確認し、完済・整理を優先しましょう
- 通帳を整備する:入金日・返済履歴を一目で確認できるように整理しましょう
- 複数ローンの見直し:金利引下げ・借換えにより返済比率を改善しましょう
- 早期完済の実績:余裕資金がある場合、繰上返済を活用して信頼を積み重ねましょう

銀行担当者は「数字より履歴」を見ています、返済実績の積み上げは、最も確実な「信用構築」の手段です
属性:金融機関が融資先に求める「人/法人」の信用力
属性とは何か?
「属性」とは、融資を受ける人や法人の経済的・社会的な信用情報のことです
具体的には、以下の要素がチェックされます
- 年収・勤務先・勤続年数
- 職種・雇用形態(正社員・経営者・個人事業主など)
- 金融資産(預貯金・証券・退職金など)
- 他の借入状況・ローン残高
- 家族構成や居住形態(持家・賃貸など)
これらは、返済能力を客観的に判断するための基礎データとなります

同じ年収でも「勤続20年の上場企業勤務」と「独立間もないフリーランス」では、評価が大きく異なります
サラリーマン不動産投資家にとっての属性ポイント
会社員・公務員など、安定収入のある層は金融機関にとって最も貸しやすい層です
理由は、給与収入が一定であるため返済能力が予測しやすいからです
属性で特に重視されるポイントは以下の通りです
| 項目 | 銀行が注目する理由 |
|---|---|
| 年収 | 年間返済可能額(返済比率)の基準 |
| 勤務先 | 企業規模や安定性による信用判断 |
| 勤続年数 | 転職リスクの低さ・安定性 |
| 副業可否 | 不動産投資が本業収入に影響しないか |

銀行は、返済余力のある層ほど「LTV(融資比率)」を高く設定しやすく、
結果として有利な金利条件で融資が通りやすくなります
融資比率(LTV)についてはこちら

属性を改善・見せるための準備
- 資産証明書の整備:通帳・証券口座・生命保険などを資料化しましょう
- 借入状況の整理:カードローンや分割払いを減らして信用情報を軽くしておきましょう
- 副業届や確定申告の整合性:本業との関係を明確化し、信頼性を高めましょう

属性は「一朝一夕では変わらない」ものですが、書類の整備と情報開示の姿勢で、銀行の印象は大きく変わります
決算書:法人/個人が準備すべき財務書類と銀行の焦点
銀行が見る3大指標
決算書は「数字で示す信用」です
銀行は特に、以下の3つの指標を重視して確認します
- 純資産(Net Assets)
債務超過でないか、資本が積み上がっているかを確認 - 自己資本比率(Equity Ratio)
総資産に対する自己資本の割合30%以上が望ましい目安 - 債務償還年数(Debt Service Coverage Period)
現在のキャッシュフローで借入を完済するまでの年数15年以内が健全とされる
これらの数字がバランスよく整っている法人は、追加融資や金利引下げ交渉にも強くなります
不動産投資法人・個人事業主が整えておくべき書類
銀行は、法人・個人の区別なく以下の書類を求めます
- 貸借対照表(B/S):資産・負債・純資産の状況を確認
- 損益計算書(P/L):年間の収益・経費・利益を把握
- キャッシュフロー計算書(C/F):実際の資金の動きを確認
サラリーマンの個人投資家の場合でも、確定申告書や収支内訳書を整理しておくと、銀行側は収益構造を理解しやすくなります
決算書を有利に見せるためのコツ
- 黒字化を維持する:赤字は一時的な要因であることを説明資料で補足
- 経費の整理:プライベート支出を混在させない
- 帳簿の透明性:レシート・明細の保存で説明責任を果たす
- 資産の時価反映:土地評価額や物件再評価を行い、実態を正しく示す

決算書は、単なる数字の羅列ではなく、経営姿勢の成績表です、整った帳簿と明快な説明ができる投資家ほど、銀行の信頼を得やすくなります
3軸の相関関係と審査突破の戦略
返済実績+属性+決算書、三つ揃ってこそ銀行評価が高まる理由
銀行の融資審査は、単一の指標だけで判断されるものではありません
「返済実績(信用の履歴)」「属性(返済能力)」「決算書(数値の裏付け)」が揃って初めて、「この投資家は貸すに値する」と評価されます
この3軸は、いわば「信頼の三角形」です
| 評価軸 | 銀行が確認する目的 | 代表的な判断材料 |
|---|---|---|
| 返済実績 | 借入金をきちんと返しているか | 通帳・信用情報・完済実績 |
| 属性 | 将来的にも安定した返済ができるか | 年収・勤務先・勤続年数・金融資産 |
| 決算書 | 事業としての継続性があるか | B/S・P/L・CF・自己資本比率 |
この3つがすべて良好な状態で提示できる投資家は、金利・LTV・返済期間のいずれも好条件を引き出しやすく、複数物件を保有するフェーズでも「追加融資の壁」を突破しやすくなります
各軸が弱い場合の弱点と改善策
融資審査では、必ずしも全ての軸が完璧である必要はありません
銀行は「トータルの信用バランス」を見ており、一部の弱点は他の要素で補うことが可能です
| 弱点のある軸 | 状況例 | 改善・補強策 |
|---|---|---|
| 返済実績が弱い | 初回融資・過去に遅延 | 小口ローンから実績を積み、返済履歴を整備 |
| 属性が弱い | 転職直後・年収が低い | 決算書の黒字化・資産証明で安定性を補強 |
| 決算書が弱い | 赤字・資本不足 | 自己資金注入・経費見直し・帳簿の整備 |
たとえば、属性が弱くても「安定したキャッシュフローを生む決算書」を提示できれば、銀行は「返済能力は十分」と判断します

決算書が未整備でも、返済実績と属性が強固であれば問題なしと判断されるケースもあります
サラリーマン投資家が実践すべき「審査対策ロードマップ」
サラリーマン投資家にとっての最大の武器は、「安定した給与収入」です
これを基盤に、段階的に信用を構築していくことが、融資戦略の王道です 以下のステップで進めることで、審査通過率を高めつつ資産を拡大できます
ステップ1:現状把握
- 自身の信用情報(CIC・JICCなど)を開示し、延滞履歴を確認
- 年収・資産・既存ローンを整理して、銀行が見る「属性票」を自分でも作成
ステップ2:実績づくり
- 小規模物件や中古区分などで初回融資の返済実績を構築
- 通帳に返済履歴を明示し、信頼の実績を蓄積
ステップ3:決算書整備(法人化検討)
- 2件目以降は法人スキームも検討し、損益の分離と資産管理を強化
- 毎期の決算書を黒字でまとめ、純資産の積み上げを意識
ステップ4:銀行別の戦略的アプローチ
- 地銀・信金:属性重視型 なら「勤務先・実績」で勝負
- ノンバンク・プロパー融資:事業性重視型 なら「決算・CF」で勝負

銀行は「将来の借入余地」も含めて投資家を評価します、返済実績・属性・決算書の3軸を長期的に積み上げる視点が不可欠です
まとめ
融資審査で有利になるためには、「返済実績」「属性」「決算書」の3つをセットで整備することが最も効果的です
この3軸をバランス良く高めることで、銀行は投資家を「安定した長期顧客」として扱い、金利・LTV・返済期間などの条件面で好待遇を提示しやすくなります
とくにサラリーマン投資家の場合、「給与+返済実績+黒字決算」という構造を作ることが、
安定した資産拡大と融資枠拡張の鍵になります

成功のカギは「数字と信用を整える準備力」です、今日からできることを一つずつ進めていけば、次の物件取得も、より確実でスムーズなステップへとつながるでしょう

