出国税は不動産が対象外って本当?|国外財産調書・財産債務調書・国外転出時課税制度をわかりやすく解説

節税・確定申告

はじめに ― 出国税は「不動産は対象外」なのに誤解される理由

海外移住したら不動産にも「出国税」がかかるのでは?
サラリーマン投資家で一定程度成果がでただんかいで疑問に思うことがあるでしょう

実は、出国税(国外転出時課税制度)の対象に「不動産」は含まれません
対象となるのは、株式・投資信託・未決済のFXなどの「含み益がある資産」です

一方で、海外不動産を所有している場合には「国外財産調書制度」
日本国内で高額な資産を持つ人には「財産債務調書制度」

といった、別の税務ルールが関係してきます

本記事では、サラリーマン不動産投資家が誤解しやすい「出国税」や海外移住や国際的な資産保有を考える前に、必ず押さえるべきポイントについて解説していきます

出国税(国外転出時課税制度)とは?

海外に移住する場合に課税される仕組みのことを一般に出国税(国外転出時課税制度)といわれております

出国税の対象となる資産

出国税の対象になるのはあくまで「含み益」のある資産です

  • 株式
  • 投資信託
  • FX・CFD の未決済ポジション
  • 株式を保有する法人の“持株”

これらは、海外移住する瞬間に「売却したものとして扱われ」、含み益に課税される仕組みになっています

「国内・海外の不動産は対象外」な点が誤解されやすいポイントです

不動産は評価額の算定が複雑なため、制度上「含み益課税」の対象に含まれていません

出国税がかかる条件

出国税は誰にでもかかるわけではなく、対象者は限定されています

  • 対象となる資産が1億円以上ある
  • 過去10年のうち5年以上、日本に住所がある
  • 1年以上の出国予定

一般的なサラリーマンがすぐに該当する制度ではありませんが、株式投資や法人保有など規模が大きくなってくると対象に近づきます

実際に税額はどう計算される?

計算式は非常にシンプルです

(出国時の含み益)× 20.315%(所得税+復興特別所得税)

「売っていないのに、売ったことにして税金がかかる」というのが出国税の特徴です

よくある誤解

次にような誤解について整理しておきましょう

  • 海外不動産を買うと出国税がかかる?
    海外の不動産も対象外です
  • 日本の不動産を持ったまま海外移住すると出国税がかかる?
    不動産は対象外です
  • 不動産法人(会社)の株式は対象になる?
    株式は「対象」になります

不動産そのものは対象外でも、「不動産法人の株式は出国税の対象」 というケースが重要です

不動産投資家が無視できない「国外財産調書制度」

出国税は対象外でも、海外不動産を持つサラリーマンが避けて通れない制度があります

それが 国外財産調書制度 です

●国外財産調書の提出義務

「海外に5,000万円超の資産を保有している」場合、毎年「国外財産調書」を提出する必要があります
他にも、対象となる資産は次の通りです

  • 海外不動産
  • 海外銀行口座
  • 海外証券口座
  • 海外保険
  • 外貨MMF・海外ETF など

未提出の場合、重大なペナルティもあります

  • 罰金
  • 過少申告加算税の増加
  • 悪質の場合は刑事罰

「知らなかった」では済まない制度のひとつです

国外財産調書のポイント

提出時には次の点に気をつける必要があります

  • 為替レートの基準日(原則:12/31のレート)
  • 評価額の算定方法(時価・公表価額・評価額)
  • 権利関係(共有・名義)の正確な記載

特に海外不動産は、国ごとに評価基準が全く異なるため、「管理会社任せにしない」ことが重要です

海外不動産を持つサラリーマンがやりがちなミス

次のようなミスが発生することが考えられます

  • 管理会社任せで実際の評価額を把握していない
  • 海外口座が複数あり、残高をまとめきれない
  • 外貨MMFや海外ETFを資産に含め忘れる

海外不動産を持つと、国内投資とは比べものにならないほど、税務管理の難易度が上がることを理解しておく必要があります

財産債務調書制度 ― 高所得サラリーマンの義務

海外資産の有無に関わらず、高所得者・高資産者が対象となるのが
財産債務調書制度 です

出国税より身近な制度で、規模が大きい不動産投資家には必ず関係してくるでしょう

誰が提出義務を持つ?

財産債務調書の提出義務は、次の条件を両方満たす場合です

  • 所得2,000万円超の給与所得者
  • 「財産3億円超」または「有価証券1億円超」

サラリーマン投資家でも、物件規模が増えればすぐに条件に近づきます

財産債務調書における不動産の扱い

財産債務調書では、不動産もすべて評価対象です

  • 国内不動産
  • 海外不動産
  • それぞれの評価額計算方法(固定資産税評価額など)
  • 不動産に紐づく借入(住宅ローン・アパートローン)

借入も併せて記載するため、純資産(=資産−負債)がいくらかが明確になります

調書を提出していると税務署からの信頼度が上がる理由

財産債務調書を正しく提出していると、以下のメリットがあります

  • 相続税の申告時に「加算税の軽減措置」を受けやすい
  • 税務調査での心証が良くなり、調査対象選定の優先度が下がる
  • 財産の棚卸しが定期的に行えるため、投資判断がしやすくなる

特に資産規模が一定以上のサラリーマン投資家にとっては、提出のメリットも得られる制度です

不動産投資家が出国税を気にすべきケース

出国税は不動産そのものに課税されません
それでも、不動産投資家が「出国税」を無視できないケースが存在します

ポイントは、不動産ではなく「不動産を所有する法人の株式」や「その他の含み益資産」です

不動産そのものは課税対象ではないが…?

不動産が対象外なのに、不動産投資家が出国税の対象になり得る理由は次の通りです

  • 不動産を法人(合同会社・株式会社)で所有している場合
  • 出国時点でその法人の「株式」に含み益がある場合

このような「株式」は出国税対象資産なので、不動産法人の株価が上がっていると出国時に課税される可能性があります

不動産ではなく、「不動産を包んでいる器(法人の株)」が課税対象になる点が誤解しがちなところです

海外移住前にやってはいけないこと

出国税は「含み益が確定した」とみなして課税される仕組みです
そのため、海外移住を意図していない行動でも、次のような行為は危険です

  • 直前に法人の株価を上げる行為
    不動産を値上げ売買したり、不自然に利益を計上する
  • 決算書上の資産評価を無理に変更する行為
    優良物件の一括評価替えなど

これらは「出国前に利益を積み上げた」とみなされ、出国税が高額になりかねません

海外移住の可能性がある人は、数年前から計画的に準備を進めるようにしましょう

海外移住者が不動産投資を続ける際の注意

非居住者になった場合、日本で不動産投資を続けることは可能ですが、ルールが大きく変わります

  • 日本での税務手続きの変更
    非居住者は確定申告の扱いや各種控除が変わり、法人経由の所得にも特別な手続きが必要となる場合があります
  • 日本の銀行融資がほぼ使えなくなる
    非居住者向け融資は非常に限定的で、多くの銀行は海外移住後の融資を受け付けていません
  • 管理会社との契約条件が変わることがある
    非居住者の場合、納税管理人の選任が義務になる場合があります
    また、入金・送金の方法が変更されることもあります

3つの制度の違いと自分が何を準備すべきか

ここまでで紹介した制度は、似ているようで全く対象者が異なります
サラリーマン投資家が押さえておくべき制度は次の通りです

  • 出国税
    海外移住予定がある人向けです
    含み益のある株式・FXなどが対象になり、出国時に課税される「海外移住者向け制度」です
  • 国外財産調書
    海外資産5,000万円超の人向けです
    海外不動産・海外預金・海外証券口座などが対象になり、毎年提出が必要な「海外資産保有者向け制度」です
  • 財産債務調書
    「高所得」又は「高資産」のサラリーマン向けです
    「所得2,000万円超」かつ「財産3億円超」で提出義務になり、海外資産の有無に関わらない「高資産者向け制度」です

 

この3つの制度を整理し、自分がどの制度が対象になるのか、理解できるように備えましょう

まとめ

まとめると次の通りです

  • 出国税は不動産にはかからない
  • しかし、不動産法人の「株式」は課税対象
  • 海外不動産を持つなら 国外財産調書は必須レベル
  • 規模が大きくなると 財産債務調書が必要になる
  • 海外移住や国際投資を見据えるサラリーマンは、税制を確認する必要がある

海外資産や海外移住が絡む税務は、一度間違えると「知らなかった」で済まないほど重大なペナルティが発生します

サラリーマン投資家が着実に規模を伸ばしていくためには、物件選びだけでなく「税務知識」も攻めの武器になることを覚えておきましょう

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