減価償却の仕組みとは?白色申告でも使える節税法を徹底解説

節税・確定申告

はじめに

サラリーマン投資家にとって、不動産投資の「減価償却」は最も重要な節税手段のひとつです。
実際に現金支出がなくても経費計上できるため、給与所得と損益通算することで税負担を減らす効果があります

さらに、白色申告でも減価償却は利用可能であり、青色申告に切り替える前からでも十分に活用できます

本記事では、減価償却について解説し、節税の仕組みについて説明いたします

減価償却とは何か?

減価償却とは、資産の購入にかかった費用を耐用年数にわたって分割して経費にする仕組みです

建物は年数とともに価値が減少するため、国税庁が定めるルールに基づき「減価償却費」として計上できます

  • 現金を使っておらず実際に支出がないが経費にできる、経費になるので課税される利益から差し引くことができる
  • 課税される利益が下がるので税金がさがる、課税される利益は給与所得にも適用されるので、節税に直結し、給与所得があるサラリーマンには効果的になる
No.2100 減価償却のあらまし|国税庁

どんな資産が対象になるのか?

サラリーマンの不動産投資で重要な「減価償却できる資産」について整理すると、建物そのものとそれに付随する設備が対象となり、土地は減価償却できません。

建物本体

不動産投資で購入するマンションやアパート、戸建ての「建物部分」は減価償却の対象です。構造によって耐用年数が異なります

  • 木造住宅(戸建て、木造アパートなど)
    法定耐用年数:約22年
  • 軽量鉄骨造(アパートなど)
    法定耐用年数:約27年(柱の厚さにより変動)
  • 鉄骨鉄筋コンクリート(SRC造)・鉄筋コンクリート造(RC造)(区分マンション、マンション一棟など)
    法定耐用年数:約47年

付随設備

建物に設置されている設備も、独立して減価償却資産として扱えます。減価償却の法定耐用年数は建物本体より短いものが多く、経費計上が早くできることが特徴です

  • 電気設備(照明器具、配線、分電盤など)
    法定耐用年数:約15年
  • 給排水設備(給湯器、ポンプ、配管など)
    法定耐用年数:約15年
  • 空調設備(エアコン)
    法定耐用年数:約6年
  • エレベーター設備
    法定耐用年数:約17年

付随設備は建物本体と同時に購入した場合も、建物部分と区分して耐用年数に応じた減価償却を行います

中古物件の減価償却の場合

中古住宅や中古マンションを購入した場合、法定耐用年数をそのまま使うのではなく、経過年数を考慮した「残存耐用年数」を計算します

その計算式は以下の通りです。残存耐用年数={(法定耐用年数−経過年数)+(経過年数×20%)}残存耐用年数={(法定耐用年数−経過年数)+(経過年数×20%)}

  • 小数点以下は切り捨て
  • ただし、最低2年は残存耐用年数として認められます

区分マンションを購入するサラリーマン投資家の場合、購入価格を「建物価格」と「土地価格」に分け、建物価格から、躯体=建物本体と設備=付随設備に分けて減価償却を計上します

どのくらい節税効果があるのか?

減価償却費は給与所得と損益通算できるため、課税所得を減らす効果があります。新築区分マンションの減価償却費を活用して、家賃収入に対して一定の節税効果が期待する場合を計算してみます

節税効果の具体例(減価償却費が100万円の例)

項目計算内容金額
給与所得(想定)700万円
家賃収入(想定)400万円
総所得700+4001,100万円
必要経費(例)減価償却費100万円
所得控除後1,100-1001,000万円
節税メリット税率20%×100万約20万円
  • 実質的に20万円分、所得税・住民税が減るイメージです。

減価償却費を活用することで税負担を軽減できる一方、物件選びや長期収支のシミュレーションも欠かせません

サラリーマンは給与から天引きされる源泉徴収があるため、減税効果を実感しやすい点が特徴です

節税効果の落とし穴は?

減価償却は「将来の課税を繰り延べる仕組み」であるため、注意が必要です

  • 減価償却が終了すると経費が減り、税負担が増える
  • 売却時には帳簿価額との差額(譲渡益)に課税される可能性がある

つまり、短期的には節税できても、長期的には課税額が増えることもあります

どの投資手法で重視すべきか?

減価償却のメリットは物件によって異なります

中古木造アパートの減価償却

  • 中古木造アパートは耐用年数が短く、購入時点から短期間で大きな減価償却費を経費計上できるため、節税効果が高いのが特徴です
  • 築古物件になるほど残存耐用年数が短くなり、1年あたりの減価償却費が増大し、短期間で課税所得を大きく圧縮できます
  • 節税メリットをすぐに得たい場合や所得圧縮を集中して行いたい投資家に最適です

新築区分マンションの減価償却

  • 新築区分マンション(鉄筋コンクリート造)は耐用年数が長く、減価償却が分散されるため1年当たりの節税効果は小さいですが、長期間安定的に経費計上ができるのがメリットです
  • 長期的に安定した運用や計画的な節税戦略を立てたい投資家向きであり、出口戦略も含めた収支シミュレーションが重要です

減価償却のメリットを最大限に活かすには「短期間で節税する中古木造アパート」か「長期運用を重視する新築RCマンション」どちらの投資手法が自身の収支戦略に合うかを見極めることが重要です

税務署から見られるポイントは?

サラリーマンの不動産投資に関する確定申告で、税務署は不自然な経費計上に注目します、特に注目しやすいポイントは以下の3点です。これらを適切に理解し対応することが、税務調査のリスク軽減になります

建物と土地の按分の適正さ

  • 減価償却の計算で重要なのは、建物部分と土地部分を適正に分けることです。土地は経年劣化しないため減価償却の対象外ですが、その按分比率が不自然に建物側に偏っていると、「過大な減価償却をしていないか」と疑われます
  • 実勢価格や固定資産税評価額、売買契約書の内訳など客観的な資料に基づく按分が求められ、書類の不備や合理的な説明が難しいと指摘される可能性があります

実態に合わない高額な減価償却の有無

  • 減価償却費を意図的に高額に計上しすぎると、税務署は「節税目的の過剰経費計上」とみなすリスクが高まります
  • とくに新築物件で耐用年数を短縮して償却したり、事業実態にそぐわない設備の高額償却をしていないかは厳しくチェックされます
  • 減価償却の計算に使う耐用年数や設備の仕様は、国税庁の基準に沿って正確に申告する必要があります

「節税目的だけの投資」とみなされるリスク

  • 税務署は不動産投資が収益ではなく、単に節税目的の「赤字作り」として行われている場合、否認の対象となることがあります
  • 建物の過剰償却や経費の水増し、実態と乖離した申告が続くと「実質的な投資活動ではない」と判断されるリスクが高まります
  • 長期間にわたり損失が出続けている場合や、収益の裏付けが不十分な場合は特に注意が必要です

節税効果を狙う場合でも、客観的な証拠や適正な計算、実質的な収益計画の説明が重要になります。サラリーマンの不動産投資における申告は、正確さと透明性を保つことで不要なトラブルを避けられます

白色申告でも減価償却はできる

減価償却は青色申告に限らず、白色申告でも可能です。

白色申告でも減価償却が適用される

  • 白色申告であっても、事業や不動産所得の申告において、取得した固定資産の減価償却は認められています
  • 減価償却は「高額で長く使う資産の購入費用を複数年に分けて経費にする制度」であり、青色申告だからといって限定されるものではありません

収支内訳書の減価償却欄に記載するだけで適用

  • 白色申告の場合、確定申告書に添付する「収支内訳書」の中の「減価償却費」欄に今年の減価償却費を記入するだけで、正しく減価償却費として認められます
  • 減価償却費の計算は耐用年数や償却方法(主に定額法)に基づきます。年度途中に資産を取得した場合は月割り計算を行い、事業用と私用の兼用資産は使用割合に応じて按分します

収支内訳書での記載方法

収支内訳書には「減価償却費の計算」という欄があり、以下の情報を記載します

  • 減価償却資産の名称
     建物、附属設備、家具など、減価償却する対象資産の名称を記載します
  • 数量
     例えば、躯体部分は面積(m2)を記載し設備部分は一式で記載します
  • 取得年月日
     資産を購入し、使用可能となった年月を記載します
  • 取得価額
     購入代金や仲介手数料などを含めた総取得額から、資産の按分をした額です
  • 償却の基礎になる金額
     減価償却計算の出発点となります、取得価額と同額が基本です
  • 償却方法
     法定の方法(定額法が一般的)を記入します。サラリーマン不動産投資ではほぼ「定額法」です
  • 耐用年数
     税法で定められた資産ごとの使用可能年数で、建物種類や構造で決まります、例えば、コンクリートの躯体は47で区分マンション設備一式なら15です
  • 償却率
     耐用年数に対応する法定のパーセンテージで、定額法なら「1÷耐用年数」です。例えば、47年のコンクリート躯体なら0.022で、マンション設備一式なら0.067です
  • 本年中の償却期間
     その年に所有・使用していた月数です、取得が途中ならその分を按分します
  • 本年分の普通償却費
     当年の定額で計算される通常の償却費です
  • 割増償却費
     特別償却や一時償却が認められるケースの追加分、一般の不動産賃貸では空欄で問題ありません
  • 本年分の償却費合計
     普通償却費と割増償却費の合計額です
  • 貸付割合
     不動産を賃貸に使っている割合です、自宅兼用なら按分が必要ですが基本は100です
  • 本年分の必要経費算入額
     償却費合計に貸付割合を掛け、不動産所得の経費に落とせる額です
  • 未償却残高
     償却後に残る帳簿上の資産価額で、翌年以降の償却計算の基礎となります

実際の計算例(イメージ)

例:建物価格800万円、木造22年

  • 償却率:0.047(定額法)
  • 年間減価償却費:800万円 × 0.046 = 約36.8万円

収支内訳書の「減価償却費」欄に記載すれば、その分課税所得が減少します

注意点

減価償却はあくまで「課税の繰り延べ」であり、将来の税負担をなくすものではありません。

  • 減価償却終了後のデッドクロスに備える
  • 売却時の譲渡所得課税を想定する
  • 長期的な資金計画と併せて利用する

まとめ

  • 減価償却は現金支出なしで経費計上でき、サラリーマンの節税に直結する有効な仕組みです
  • 建物本体と付随設備は耐用年数ごとに償却可能だが、土地は対象外なので按分が必要です
  • 節税効果は短期型(中古木造アパート)と長期型(新築RCマンション)で戦略が大きく異なります

減価償却は不動産投資のメリットを数値化しやすく、給与所得との相性が良い制度だと思います、一方で将来課税の繰り延べにすぎない点を理解し、長期収支の見通しを持つことが重要です

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