はじめに
不動産投資家にとって、青色申告65万円控除の取得や電子帳簿保存法への対応は
もはや避けられない重要テーマになっています
帳簿管理を効率化する手段としてクラウド会計の導入を検討する人は増えていますが
freeeとマネーフォワードのどちらが良いのか?という点では迷うケースもあります

本記事では、不動産投資家がクラウド会計を選ぶ際に押さえるべきポイントを
制度・会計処理・実務の観点や判断の軸を整理して、解説します
第1章:クラウド会計を導入すべき理由|不動産投資家が得られる3つのメリット
不動産投資は、家賃入金・ローン返済・管理費・修繕費など
金融取引が体系的に発生する会計処理向きのビジネスです
そのためクラウド会計との相性が非常に良いという特徴があります
導入によって得られる主なメリットは次の3点です
- 青色申告65万円控除の取得要件と相性が良い
クラウド会計では主に
・電子帳簿保存
・電子申告
・仕訳帳・総勘定元帳の電子的な形での保存
を満たす必要がありますが、自動的に満たすことが可能です
手作業より圧倒的に実現できます - 入金・引落の自動連携で記帳ミスが減る
記帳では主に
・家賃入金
・ローン返済、元金や利息の仕訳
・管理会社からの引落
・クレジットカードでの支払い、修繕費など
といった内容を記録しますが、手作業での記帳が不要となります
時間とミスの両方を削減できます - 不動産特有の仕訳がテンプレート化しやすい
不動産特有の仕訳としては
・減価償却
・固定資産登録
・管理会社の魔スター登録
・物件別収支の自動集計
などがあり、Excel管理では苦労しがちな部分が自動化されます
効率が大幅に高めることが可能です

クラウド会計は、便利だから使うというよりも、「制度対応と実務負担を両立するための選択肢」に近い存在です
第2章:freeeとマネーフォワードの比較ポイント
クラウド会計の比較では一般的な会計機能を並べるケースがおおいですが
ここでは、不動産投資家に必要となる特性に基づいて比較してみます
実務で違いが出やすい項目に絞ることで、迷いが少なく判断できるようになります
比較のポイントは主に6つです
比較①:固定資産(減価償却)の扱いやすさ
- 建物・設備をどこまで自動化できるか
- 償却計算のミスを防ぐ仕組みの違い
比較②:物件別収支の管理しやすさ
- 物件ごとの年間収支をどう集計するか
- 明細の紐付け方法に差が出やすい
比較③:通帳・クレジットカード連携の安定性
- 金融機関の自動取得頻度
- 明細の欠損・同期エラーの発生率
比較④:税理士の対応実績・サポート範囲
- 税理士がどちらを使い慣れているか
- データ共有(閲覧・編集)の相性
比較⑤:自動仕訳の精度
- 家賃・ローンなど不動産固有の処理を正しく推測できるか
- 誤分類が連鎖しにくい構造か
比較⑥:料金プラン
- 物件数・口座数に応じて必要なプランが変わる
- どこまでの機能を使えば青色65万円控除を満たせるか
この6項目を見れば、「どちらを選ぶべきか」が自然に判断でき
不動産投資家に不要な情報を排除した比較が可能になります
第3章:freeeはどんな人に合う?特徴と選ばれる理由
freeeは「個人事業主向け」として設計されたサービスという色が強いです
操作フローがシンプルでスマホ操作に最適化されています
不動産投資を行う個人が導入した場合も
仕訳入力より管理と自動化に比重を置いた使い方がしやすいことが特徴です
公式情報をもとに、freeeが持つ基本的な特性を整理します
freeeの主な特徴
主な特徴としては
- スマホアプリからの操作性が高く、申告書類の作成までモバイルで完結しやすい
- 口座・カード連携の更新頻度が高く、複数口座管理に対応
- 個人事業・副業・不動産収支を一元管理できる設計
- 自動仕訳の推測が「個人の資金流れ」に強く生活費・副業・不動産が混在していても整理しやすい
といった特徴があります
不動産投資家がfreeeを選びやすい理由
不動産投資の視点で選びやすい理由としては
- スマホ中心で管理している人には操作の手間が少ない
- 複数口座の明細をまとめて管理しやすく、資金が分散していても把握しやすい
- 不動産以外に副業やフリーランス業務がある場合、一元管理しやすい
といった理由があげられます
freeeと相性が良い不動産投資ケース
特徴と理由を組み合わせて、不動産投資と特に相性が良いケースは
- 戸建て・区分などの少数物件で、金融取引が多くない
- 家賃入金の振込口座が複数あり、自動連携を使って管理したい
- 外出先やスキマ時間で帳簿管理を完結したい
- 副業との収支をまとめて管理し、確定申告を一本化したい
というケースには最適と考えられます
freeeが向いている人の特徴
最後に、freeeが向いている人の特徴をまとめます
- スマホで操作を完結したい
- 口座・カードを多く使い分けている
- 不動産と副業の収支が混在しており、一元化したい
- 入力より「自動化の恩恵」を最大化したい

このような特徴を持ったサラリーマン不動産投資家にはオススメといえそうです
第4章:マネーフォワードが合う人は?特徴と選ばれる理由
マネーフォワードは「会計処理の精度」「細かな管理」に強い構造を持ってます
不動産投資のように物件単位で整理する必要がある業務と相性がよい点が特徴です
家計簿アプリとの連携も強みで、全体資産を広く管理する層から支持があります
公式情報をもとに、マネーフォワードの特徴を整理します
マネーフォワードの主な特徴
まずは特徴としては
- 金融連携が広く、家計簿アプリのデータともシームレスに扱える
- パソコン操作前提で設計されており、画面構成が整理されている
- 仕訳ルールの設定が細かくでき、複雑な不動産収支管理に向いている
- 不動産向けテンプレートが多く、仕訳の自動化の精度が安定しやすい
といった項目があげられます
マネーフォワードを選ぶ理由
不動産投資の視点で選ぶ理由としては
- 物件別収支の可視化がしやすい
- 家計管理(家計簿アプリ)と不動産収支をまとめて見やすい
- 修繕費・設備などの仕訳ルールを細かく設定できる
- PC中心で帳簿を落ち着いて作るスタイルと相性が良い
といった理由があげられます
マネーフォワードと相性が良い不動産投資ケース
特徴、選ぶ理由を踏まえ、不動産投資で特に相性が良いケースを整理すると
- 物件を複数所有しており、物件別に収支を管理したい
- 家賃振込・管理会社引落・クレジット引落など取引が多い
- 減価償却や修繕費の仕訳を細かく最適化したい
- パソコン中心で作業する習慣がある
というケースには最適と考えられます
マネーフォワードが向いている人の特徴
最後に、マネーフォワードに向いている人の特徴をまとめます
- 複数物件・複数口座を体系的に管理したい
- 家計簿アプリも併用している
- 記帳精度を重視し、仕訳ルールを細かく設定したい
- パソコンで落ち着いて帳簿処理したい

このような特徴を持ったサラリーマン不動産投資家にはオススメといえそうです
第5章:導入前に必ず決めておくべき「3つの判断軸」
クラウド会計の選択はどちらが優れているかというより
「どちらが自分の実務と整合しているか」で判断する必要があります
利用者の性格ではなく、システム側の特性から逆算するほうが迷いがなくなります
そのためには、導入前に主に3つの判断ポイントを明確にしておくことが重要です
判断ポイント① 通帳・カードは何を連携するのか
どのような利用が口座を使用している状況かを確認しましょう
- 家賃入金口座は何本あるか
- 修繕費の支払い方法は?(口座/カード)
- 私用口座と投資用口座を分けているか
など、連携したい金融口座が多いほど、freeeの強みが活きます
逆に、少数の口座を正確に管理したいならマネーフォワードが向いています
判断ポイント② 物件別収支をどこまで管理したいか
次の点を決めておくと選択が容易になります
- 物件ごとに年間収支を見たいか
- 修繕費や原状回復費を物件単位で追いたいか
- 区分・戸建てなど種別ごとに整理したいか
物件管理の細かさを重視する場合はマネーフォワードが有利です
判断ポイント③ 税理士とデータ共有する可能性の有無
税理士との関係で押さえておくべき視点は
- 税理士がどちらのソフトを使い慣れているか
- データ共有機能(閲覧・編集)の使いやすさ
- 将来的に法人化する可能性があるか
といったことがあげられます
税理士連携を重視するなら、税理士の対応実績が多いサービスを選ぶほうがスムーズです

このような判断ポイントを事前に決めておけば、自然とどちらかが良いか浮かび上がるため、無駄な比較や悩みを避けられます
第6章:実務フローで見る|freeeとマネーフォワードの違いが出る場面
クラウド会計は同じように見えて、実務フローで違いが強く出るケースが複数あります
両システムの仕様に基づく実務差が生まれやすいケースを整理しておきます
固定資産登録(減価償却の自動化プロセス)
- freeeの場合
・登録画面がシンプルで、スマホからも入力可能
・償却方法・耐用年数をシステムが推奨してくれる
・固定資産台帳が軽量で、初心者でも迷いにくい - マネーフォワードの場合
・入力項目・補助情報が豊富で、複数物件・複数設備の管理に向く
・償却計算は会計基準に忠実で、詳細な確認がしやすい
・物件ごとに資産を分類しやすい
固定資産登録の視点では
設備ごとの資産を細かく管理したい場合はマネーフォワードが有利で
逆に、スマホ中心で最低限の登録で済ませたい場合はfreeeが効率的です
自動仕訳の確認作業
- freeeの場合
・スマホ通知で要確認仕訳をまとめて処理できる
・自動学習は早いが、誤学習が起きやすい場面もある
・画面遷移が少なく、作業スピード重視のデザイン - マネーフォワードの場合
・仕訳候補の一覧性が高く、複数口座を横断して確認しやすい
・推測ロジックが保守的で、誤分類が少ない傾向
・仕訳の複数一括承認がしやすい
自動仕訳で確認作業をする視点では
口座が多い不動産投資家はマネーフォワードの一覧性が有利で
スマホで短時間処理したい場合はfreeeが効率的です
家賃入金の扱い
- freeeの場合
・推測ロジックが強く、自動で「家賃収入」と判定されやすい
・入金パターンを学習するため、毎月の仕訳がほぼ自動化 - マネーフォワードの場合
・家賃入金も正確に処理できるが、「入金元の名義揺れ」があると候補が複数出やすい
・物件ごとの補助科目設定をしておけば、精度は安定する
家賃入金の作業の視点では
名義揺れが多い物件はfreeeが安定します
複数物件・複数入金元を厳密に紐付けたい場合はマネーフォワードが有利です
科目の自動推測のクセ
- freeeの場合
・シンプルな科目体系に揃える思想になっている
・自動推測が積極的で、仕訳候補が1つに絞られやすい - マネーフォワードの場合
・科目選択の自由度が高い
・不動産向け補助科目の種類が多く、精度が高い
自動推測の機能の視点では
仕訳候補が1つにまとまっている方が良い人はfreeeが有利ですが
補助科目を細かく分けたい人はマネーフォワードが適しています
修繕費または資本的支出の判定補助
- freeeの場合
・判定支援ロジックはシンプル
・金額や内容から自動分類されるが、複雑な判定は自分で調整が必要なケースもあり - マネーフォワードの場合
・設備分類の項目が多く、資本的支出の管理と相性が良い
・固定資産台帳と連動して判定しやすい構造
修繕費や資本的支出の判定の視点では
設備交換の多い物件はマネーフォワードが優位ですが
最低限の判断基準で処理したい場合はfreeeで十分です
確定申告書類の出力フロー
- freeeの場合
・スマホで申告書の提出まで可能
・画面誘導が強く、初心者でも迷いにくい - マネーフォワードの場合
・各申告書の内容を細かく確認しやすい
・複数物件の不動産所得が複雑でも、帳票構造が安定
確定申告書類の出力の視点では
申告をスマホで完了させたい人はfreeeの方が優位ですが
提出前に「帳票を紙のように確認したい」タイプはマネーフォワードが効率的です
第7章:導入後の失敗を防ぐために知っておきたい3つの落とし穴
クラウド会計の失敗は、ソフトではなく「運用や初期設定」に起因します
不動産投資家が特に陥りやすい典型的な落とし穴を中心に整理します
落とし穴①:会計ソフトより初期設定が重要
- 勘定科目
- 補助科目(物件別収支)
- 口座連携の範囲
これらが曖昧なまま使い始めると、後半に修正が必要になり、工数が倍以上かかります
「開始時点での設定の正確さ」が収支管理の品質を決めます
落とし穴②:自動仕訳の過信
どの会計ソフトでも「自動化」の裏側は、過去データの学習です
そのため、最初に誤分類が入ると、その判断が連鎖しやすい構造になっています
典型的な誤分類例
- 家賃の一部が「雑収入」
- 修繕費が「消耗品費」
- 借入金返済が「経費」扱い
一度誤分類されると、補正は時間がかかります
落とし穴③:税理士との連携仕様を確認していない
税理士がfreee・マネーフォワードのどちらに対応しているかは必ず確認が必要です
また、クラウド会計は「データ共有の仕組み」が事務所ごとに異なります
確認すべき項目
- 税理士が使用する会計ソフト
- データ共有の方法
- 補助科目や固定資産の扱い
事前確認を怠ると、帳簿の再作成が発生することもあります
まとめ
freeeとマネーフォワードは、どちらが優れているかでの判断は難しく
「自分が何を重視するか」で選ぶサービスです
特に不動産投資においては、物件管理・固定資産・金融機関連携の3つが最も重要なポイントです
初期設定を正しく行えば、どちらのサービスでも青色申告特別控除(65万円)
の要件を満たすことが可能です

本記事で紹介した判断軸を参考に、自分の投資スタイルに最も適したクラウド会計ソフトの合理的な判断にお役立ちできれば幸いです

