はじめに
不動産投資では、家賃収入に対してどこまで費用を計上できるのかが収益性を大きく左右します
しかし、実際のケースで最も判断が難しいのが「消耗品」「交通費」「通信費」といった
日常的に発生する支出です
これらは業務と私生活が重なりやすく
税務署・税理士・投資家の間で判断基準にズレが生まれやすい領域でもあります
不動産投資家が迷いがちなポイントとしては
- 経費にできるかできないかの線引き
- 消耗品・交通費・通信費の私生活と業務の判断
- 税務署・税理士・投資家の間で微妙に判断基準が異なる理由

本記事では、こうした迷いを解消するために、税務上のルールからケース毎の判断方法、失敗例と成功例について解説します
第1章:なぜ不動産投資の経費は判断が難しいのか?
不動産投資の経費判断は、他業種に比べて境界線が曖昧です
その理由を理解しておくことで、後の章の判断が格段にスムーズになります
まず経費判断が難しくなる背景を整理しておきましょう
経費判断の複雑さを生む背景としては
- 税法に明確な「経費のリスト」は存在しない
- 実際の場面で重視されるのは「必要性」と「関連性」
- 運営している規模で判断が変わる
- サラリーマン兼業特有の私的利用との境界が争点になりやすい
- まず経費とは何かから理解する必要がある
これらは税法上のルールは大まかなのですが
実際の場面では細かい説明を求められる点に起因しています

不動産投資における経費判断は正解がひとつではなく
説明可能性がすべてと言えます
第2章:不動産投資の消耗品はどこまで経費にできる?判断基準と具体例
消耗品費は、不動産投資家にとって最も身近でありながら最も誤解が多い科目です
まずは、税務上の考え方や例について確認しておきましょう
税務上の考え方
消耗品と認められるためには、次の要件を満たす必要があります
- 10万円未満の物品は原則経費として認められる
- 用途が「事業に直接関係するか」がもっとも重要
優先される考え方は金額よりも「用途の説明力」です
客観的に見ると当たり前の事ですが
不動産業務に必要であれば経費として認められます
私的利用が混ざる場合は按分が必要になると考えておけばよいでしょう
経費になる具体例
ここでは、具体例を通じて線引きを確認しておきましょう
まず、経費として認められやすい消耗品の例としては
- プリンター用紙、インク、電卓
- 現地確認用の測量道具
- 鍵交換工具、清掃用品
など、直接不動産の運営に必要な物品のための消耗品です
一方で、グレーゾーンとして扱われる代表的な例としては
- 私用としても使っているパソコン周辺機器
- 私用としても使っている携帯電話
等があげられ、要するに私的にも使っている機器や経費です
明確に経費として認められないものも存在します
- 日常生活用の消耗品
このように、同じ「消耗品」でも業務との関連性の強弱によって扱いが全く異なります
失敗例と成功例
同じ経費でも説明の仕方で結果が変わります
そこで、典型的な失敗例と成功例を紹介します
- 失敗例:家庭用消耗品をまとめて購入した場合
⇒ 按分なしで否認されてしまう
プライベートと事業用が混ざった支出は、必ず按分が必要です - 成功例:物件ごとの用途メモや領収書で説明可能にした場合
⇒ 経費として認められる
用途のメモを残すだけで、経費としての説明力が大きく向上します
この差は、運用のひと手間にすぎませんが
税務署・税理士が最も重視する部分でもあります
経費の相場や目安
税務署の目線を理解するために
消耗品費の相場感を押さえておきましょう
- 年間5万円以下なら大きな問題になりにくい
- 私的利用がある場合は50%按分が一般的
あくまで目安ですが、これを意識しておくことで
過度に高い消耗品費にならないよう調整できます
第3章:交通費はどこまで認められる?現地調査・銀行・管理会社の線引き
交通費は、不動産投資の実務で最も多く発生する経費のひとつです
しかし、「業務目的の移動」と「私的移動のついで」の境界が曖昧になりやすいケースも多いです
税務調査でも頻繁に確認される項目です
誤った計上を避けるために
まず税務上の原則と、認められやすい・認められにくいパターンを確認しておきましょう
税務上の基本原則
交通費の根本的な考え方は非常にシンプルですが
適用には注意が必要です
- 業務遂行上必要な移動はすべて経費
- 私的移動が混じると否認されやすい
この2点がすべての判断基準になります
特にサラリーマン投資家の場合、業務と私生活が混ざりやすいため、説明可能性が重要になります
認められやすいケース
経費と認定される可能性が高いケースを整理します
- 物件の現地調査
- 管理会社・仲介会社との打合せ
- 入居者トラブル対応
- 金融機関との面談
いずれも「業務目的が明確」です
第三者の目から見ても合理性があります
また、これらの移動はスケジュール記録・写真・メール履歴など
証跡で補強すると、より安全性が高まります
認められにくいケース
一方、目的が曖昧な場合
あくまでついでが中心の移動は否認されるリスクが高まります
- 家族旅行のついでに不動産を見る
- 投資セミナー後の飲食費をまとめて計上
特に「旅行のついで」は典型的な否認対象であり
税務指摘されるケースでもっともよく見られる事例です
失敗例
交通費の計上でつまずくケースとして代表的な例は
- ついでの移動を交通費にしてしまい、説明できず修正した
- レシートなしの交通費をまとめて計上してしまい、不自然に見える
まとめて計上は裏付けがないため、最も不信感を招く行為です
成功例
一方で1件づつ証跡を残し
業務目的と移動の整合性を説明できていれば、税務署の評価は大きく変わります
- Google Mapの移動履歴・現地写真を残して整合性を確保
- 面談日程をスケジュールに記録し経費と紐付け
証跡は多ければ多いほど良いということではなく
合理性が説明できる最低限の資料を揃える意識で十分です
数字で見る基準
交通費は金額の大きさでも判断されます
一般的には、以下が安全圏の目安です
- 年間交通費の総額が家賃収入の5~10%を超え始めるとチェックされやすい
数字は絶対ではありませんが、「規模に合った経費」を意識することで
不自然な支出を避けられます
第4章:通信費はどこまで経費にできる?スマホ・Wifi・PCの按分と税務の考え方
通信費は、現代の不動産投資では欠かせない支出です
しかし、私生活でも必ず利用する費用であるため
税務上は「按分」が前提となります
ここでは、按分の原則と、実務的に認められやすい処理方法を確認しておきましょう
税務上の前提
通信費の考え方を理解するために、まず押さえるべきポイントは次の2つです
- 通信費は按分が前提
- 按分比率の根拠が説明できる
つまり、100%事業利用でない限り
全額を経費に計上してしまうと不自然に見えてしまいます
経費にできる具体例
通信費として計上しやすいものは次のとおりです
- スマホ通信料(事業使用分)
- Wi-Fi費用(自宅兼事務所の場合は按分)
- モバイルルーター
特にスマホは、不動産管理・問い合わせ対応・写真共有等で業務使用が多いため
30~70%の按分が一般的で無難な範囲です
按分の考え方
按分比率は、自分の業務内容に基づき合理的に設定する必要があります
- 一般的な按分:30~70%
- 自宅をオフィスとして使う場合は面積比または使用時間比で説明
オフィスとして私用しているエリアの面積比や、使用時間や業務の内容をベースに数値化しておくと
税務署にも説明しやすくなります
仮に指摘された場合でも客観的に反論が可能です
失敗例
通信費の典型的な失敗例も確認しておきましょう
- 全額通信費に計上した例では、税理士に全て修正される
- 自宅ネット回線の按分を根拠なしで50%にした例では、根拠について突っ込まれる
根拠がない按分は避けるべきポイントです
成功例
一方、按分の根拠を整理し、業務利用を説明できれば問題ありません
- 使用目的(管理会社との連絡、現地写真送付、資料作成)を整理
- 電話履歴・メール量・業務時間で按分根拠を作成
この程度の整理でも、説明可能性は十分です
第5章:経費判断を一気にラクにする
ここまで「消耗品」「交通費」「通信費」の判断基準を整理してきました
最終的に重要なのは自分で判断できる仕組みを持つことです
そこで、実務で迷ったときに使える「3ステップの経費判断フロー」を整理します
ステップ1 業務との関連性を説明できるか
まず最初の判断軸は業務のために必要だったかどうかです
例えば
- 物件管理のため
- 入居者対応のため
といった例があげられます、客観的に見れば当然といえば当然です
このような説明で整理できない支出の場合は
原則として計上すべきではありません
ステップ2 金額が過度に大きくないか
次に、金額の妥当性を確認しましょう
具体例では
- 家賃収入の10%を超えない
業務との関連があっても、金額が大きすぎてしまうと疑われます
客観的に見て、実際に商売で収入に対して多すぎる支出するか?を考えてみるとわかると思います
ステップ3 第三者が見ても不自然でない証跡があるか
最後に、証跡をセットにして管理することで、経費の説明力が大幅に向上します
具体的には
- 日付
- 用途メモ
- スケジュール記録
この3つが揃っていれば、多くの経費は合理的に説明できます
第6章:実際に筆者がやった「経費管理の仕組み化」
ここでは、筆者が実際に行っている「経費管理のルール化・仕組み化」を紹介します
なお、不動産投資ではなく白色申告の経験に基づくものですが、考え方は不動産投資でも同じように活用できます
重要なのは、複雑な管理方法を採用することではなく、再現性が高いミスしない仕組みを作ることです
領収書はPDF化し、ファイル名に名前・金額・用途を付けて整理
筆者が最初に導入したのは「紙を残さない」運用です
- 領収書はスマホまたはスキャナでPDF化
- PDF のファイル名に「年月日_金額_用途」を記載する(例:20250115_1480_文房具.pdf)
こうすることで、ファイル検索が非常に容易になり、仕訳をする際も用途が明確です
PDFファイルをエクセル表で一覧化し、用途をセルにメモ書き
PDF化に加えて、一覧で確認できるようにエクセルで台帳を作成しています
- PDFのパス
- 日付
- 金額
- 用途のメモ
- 経費科目
エクセルがあることで「重複計上」「用途不明」のリスクがゼロに近づきます
後から按分の判断や税理士への確認もしやすくなります
交通費は月初にまとめ精算せず、都度記録+Suica履歴を保存
交通費でよくあるミスは「まとめて月末に精算する」ことです
私の場合、これを避けるため、次の運用を継続しています
- 交通費は都度記録
- Suica履歴・利用履歴を月1回ダウンロードして保存
- エクセルにも記録し、日付と用途をひも付け
この方法により、曖昧なついで移動の排除が徹底できます
家事按分は事前に税理士とすり合わせして固定化
按分は後から調整するのではなく、事前に固定化する方がミスがありません
- 税理士に事前相談
- 使用目的・業務時間・生活利用時間・私用するエリアを整理
- 年間を通じて変わらない按分率を設定
按分のブレをなくすことで
税務署に「一貫性がある」と判断されるメリットがあります
経費分類ミスゼロを実現したシンプル運用
上記の運用を最低限のルールとして機能させることで、
- PDFによる原本管理
- エクセルでの一覧化
- 都度記録による交通費の透明性
- 固定化した按分率
- 科目分類も事前にテンプレ化
結果として、分類ミスがほぼゼロの状態で毎年の確定申告を進められています
複雑な仕組みを作らなくても、再現性あるルールを固定化すれば十分です
第7章:税務調査で見られるポイント
税務調査では、帳簿の細かい形式よりも「不自然な点がないか」や「説明できるか」が重視されます
特に不動産投資における経費は、次の観点で確認されます
合計金額が大きい科目(交通費・通信費・修繕費)
税務署は多額の科目から優先的に確認します
目的は不足している税金が無いか?のため金額が大きい方が、取れる税金も高くなるためです
金額が大きくなりやすい科目は
- 交通費
- 通信費
- 修繕費
この3つです
不動産投資家でも金額のブレ幅が大きいため、重点的に確認されます
私的利用との境界が一番注目される
経費の否認で最も多いのが「私用が混ざっている」という指摘です
- 旅行ついでの現地確認
- 家事利用と混在した通信費
- 家族利用が含まれる備品購入
業務目的が明確でなければ、金額が小さくても否認される対象になります
領収書の整合性と用途メモの有無で印象が変わる
税務調査は「帳簿の形式」より「帳簿の信頼性」を重視します
- 日付と用途が揃っているか
- PDFなど電子データと紙の保存が一貫しているか
- 必要なメモが残されているか
用途メモの有無は、調査官が最初に確認するポイントです
グレーゾーンでも一貫したルールがあれば否認されにくい
経費には明確な白黒が存在しない領域もあります
その場合、調査で重視されるのは次の点です
- 毎年同じルールで按分しているか
- 説明可能な根拠があるか
- 特例的な処理が多すぎないか
ブレがないことは、税務署への最大のアピールになります
まとめ
不動産投資の経費計上は、判断があいまいになりがちですが
実は説明できるかどうかが最大のポイントです
税務署や税理士に対して筋道立てて話せるなら、経費として認められる可能性が高いでしょう
迷いやすい消耗品・交通費・通信費は、「関連性・金額・証跡」の3軸で考えるのが基本です
投資活動との関係性、妥当な金額かどうか、領収書などの記録があるかこの3点を満たしていれば、経費として計上しても問題になりにくいです

支出の用途を具体的に言語化し、証跡を残した帳簿づくりを心がけながら、節税を実現し、堅実な資産形成に取り組んでいきましょう


