はじめに
節税のために不動産投資を始めたはずなのに、なぜかお金が残らない
サラリーマン投資家が抱えるケースがある悩みの一つだと思います
不動産投資は、たしかに節税と相性の良い投資です
しかし一方で、税金・経費・帳簿は分からないまま動くと
失敗する可能性がある分野でもあります
サラリーマン投資家が良かれと思ってやった節税で
逆に損をしているケースも決して珍しくはありません
税金が減って喜んでいたのに、数年後にまとまった追徴課税されたり
資金繰りの悪化に直面する
といったケースも珍しくありません

本記事では、サラリーマン不動産投資家がやりがちな節税ミス5選について整理し、正しくお金を守る考え方を分かりやすく解説していきます
第1章:なぜサラリーマンは「節税で失敗」しやすいのか?
サラリーマンが節税で失敗しやすい最大の理由は
節税は「お得」というイメージが先行しすぎていることにあります
実際の不動産投資では、関わってくる税金は複数あります
- 所得税
- 住民税
- 法人税
- 消費税
これらが同時に絡み合ってくるため
全体像を理解しないまま部分最適で動くと、どこかでズレが生まれてしまうことになります
更に、ワンルームマンション投資、戸建て投資、そして法人化など
各ケースにおいて節税ロジックがまったく別物になります
同じ「不動産投資」でも、節税の考え方は共通ではありません
SNSや営業トークでは
「この物件は節税になります」
「給与と損益通算できます」
といった言葉だけが一人歩きしてしまいます

「節税できます」という言葉の裏には、必ず条件と代償がある
という前提を理解しないまま投資を進める事が失敗の第一歩になりやすいのです
第2章:サラリーマンがやりがちな節税ミス①
減価償却はお金が増えると思い込む
最も多い節税の勘違いしやすい点は
減価償却は「お金が増える」と思い込むということです
確かに減価償却を使えば、帳簿上の利益は圧縮され
結果として所得税や住民税は一時的に下がります
しかし現実には
「税金は減ったのに、手元のキャッシュは増えない」
というケースが起きます
よくある失敗パターンは次のような流れです
中古ワンルームをやや高値で購入し
耐用年数の短さを理由に、毎年大きな減価償却を取る
その結果、最初の数年間は税金が大きく下がり、節税できた気分になります
ところが、いざ売却する段階になると、
帳簿価格が大きく下がっているため、譲渡益が膨らみ、売却時に税金が発生する
という、いわゆる
「節税できたはずなのに、最後にまとめて回収される」
という状態になるわけです
本質的に言えば
減価償却は節税ではなく、課税の先送りという点を理解する必要があります
将来払う税金を、今は一時的に後ろへずらしているだけなのです
この仕組みを理解しないまま、減価償却が大きい事が特になると判断してしまうと
後から取り返しのつかないズレが生まれてしまいます
減価償却についてはこちら
譲渡所得税についてはこちら
第3章:サラリーマンがやりがちな節税ミス②
経費にできることをいいことに、何でも経費に落としてしまう
節税を意識し始めると、多くの人が最初にぶつかるのが
「これは経費になるのか?」という壁です
ここでよくあるのが
「不動産投資に少しでも関係しそうなら、何でも経費にしてしまう」
という危険な判断です
これは短期的には税金が下がったように見えますが、長期的には大きなリスクになります
プライベート支出の経費化リスク
特に税務調査で指摘されやすいのが、次のような項目です
- 通信費
スマホやインターネット代を全額経費にするケースでは
私用と業務用の明確な区分ができていないと否認されやすい代表例です - 車
不動産の現地確認で使っているからといって、ガソリン代・車両費・保険料を
すべて経費にするのは非常に危険です
使用実態の説明が求められます - 交際費
入居者対応や業者との打ち合わせがあったとしても
私的な飲食と混ざるとグレーと判断されることがあります - 自宅家賃
在宅作業があるからと、家賃の半分以上を経費にする人もいますが
床面積や使用時間など合理的根拠がないと否認される可能性がある項目です
税務調査
意図せぬ否認から追徴課税されるパターンについて整理しておきましょう
怖いのは、「悪気はなかった」では済まない点です
税務調査では
その支出がどの物件のどの業務にどれくらい関係しているのか?
をすべて説明できなければ否認されます
そして否認されると
- 過去数年分の所得税・住民税
- 延滞税
- 加算税
がまとめて請求されます
節税のつもりが、数百万円単位の追徴課税リスクに変わるケースがあることを理解しておく必要があります
経費
経費に落とせるかという基準より
「説明できるか」で決まります
経費判断の本質は
「税理士がOKと言ったか」でも
「ネットに書いてあったか」でもありません
最終的に問われるのは
「第三者に合理的に説明できるか」
実務上の安全な考え方は
業務との関係性を数字・割合・使用実態で客観的に説明できるか?
という点を基準にすることです

経費は「攻めすぎない」ことで、結果的に一番安全で、長く続く節税になります
第4章:サラリーマンがやりがちな節税ミス③
法人化すれば自動で節税できると思っている
不動産投資を進めていくと耳にする魅力的なささやきとして
「そろそろ法人化したほうが節税になりますよ」という言葉です
確かに、法人化には節税メリットがあるのは事実です
しかし問題なのは、
法人化したらどんなケースでも「自動で節税できる」と誤解してしまうことです
法人化にも必ず発生する固定コスト
法人を作るだけで、次のような固定コストが毎年発生します
- 設立費(定款・登録免許税などで20〜30万円前後)
- 税理士費(年間20〜40万円以上が一般的)
- 社会保険(役員報酬を取ると強制加入)
- 住民税均等割(赤字でも最低7万円前後)
これらは、利益が出ていなくても必ずかかるコストです
利益が少ない段階での法人化
利益が少ない場合、法人化すると節税どころか赤字構造になる可能性があります
例えば、年間の不動産所得が100万円程度の段階で法人化すると
- 節税効果:数万円〜十数万円
- 固定コスト:30〜70万円超
という構造になり
節税による支出を抑える効果より、コストの支出が大きくなり
「毎年赤字」を自ら作る形になります
「節税になると聞いたから」という理由だけで法人化してしまうと
気づいたときには引き返せない構造になってしまいます
目安としての判断基準
法人化の判断は、少なくとも次の3つをセットで見ていく必要があります
- 年間キャッシュフロー
法人の固定費を吸収できるだけの余力があるか - 税率差
所得税・住民税と法人税で、どれだけ差が出るか - 社会保険インパクト
役員報酬を取ったときに、保険料負担がどう増えるか
これらを数字でシミュレーションしない法人化は失敗するリスクが高いです
法人化は「節税テクニック」ではなく
事業ステージが変わるタイミングで検討すべき経営判断だという認識が必要です
第5章:サラリーマンがやりがちな節税ミス④
帳簿・領収書を「後回し」にしてしまいがちですが
ここにも罠があります
サラリーマン投資家でやってしまいがちなケースとして
「確定申告の時期だけ頑張る」タイプです
普段は帳簿も領収書も放置してしまい
2月になってからレシートの山と格闘する
このようなやり方では様々なリスクが潜んでいます
年1回の確定申告だけ頑張る人の危険性
このタイプの人に共通するのが
- 数字を正確に把握していない
- どの物件が儲かっているか分からない
- キャッシュフローの実態を勘で判断している
という状態です
これでは
- 売却すべき物件
- 繰上返済すべき物件
- 買い増すべきタイミング
こうした重要な経営判断をすべて間違えやすくなります
月次で数字を確認しない場合
不動産投資は経営ですが、経営には数字が必要です
つまり、経営判断を見誤ってしまうことになります
不動産投資は「買ったら終わり」ではありません
毎月の家賃、毎月の返済、毎月の経費など、月次で把握して初めて「経営」になります
月1回でもいいので
- 家賃収入
- ローン返済
- 管理費・修繕費
- 手残りキャッシュ
この4つだけでも把握していないと
危険な赤字に気付くのが1年遅れになります
実務的な失敗例
実際によくあるのが、次のようなミスです
- 領収書紛失
経費にできず、税金だけ増える - 仕訳ミス
本来は資産計上すべきものを経費にして否認されてしまう - 年跨ぎ処理ミス
支出の計上時期ズレで税務リスク発生する
これらはすべて
普段からやっていれば防げるミスです
帳簿と領収書は、節税のためではなく
「自分の資産を守るための防具」だと考えるほうが、結果的に長く安定して投資を続けられます
第6章:サラリーマンがやりがちな節税ミス⑤
節税だけを目的に赤字物件を買うケースがあります
節税に本気になりすぎた人が、最後にたどり着いてしまうのが
「税金を減らすために、あえて赤字物件を買う」という発想です
確かに、赤字が出れば課税所得は減ります
しかしこの考え方は、投資としては本末転倒の危険な思考です
「税金を減らすために赤字をわざと作る」危険な思考
よくあるのが
- 減価償却が大きいから
- 築古で経費が多く取れるから
- 今期の税金が高そうだから
といった理由で「多少赤字でも節税になるなら投資する」と判断してしまうケースです
この場合、客観的に考えれば
税金が減る代わりに、毎月お金が出ていく
という構造を、自ら作っていることになります
税金は減るが、キャッシュフローは減ってしまうということです
例えば赤字1万円を出せば、税率30%なら節税効果は3,000円程度です
一方、手元のキャッシュは毎月1万円減っています
つまり、3,000円を守るために、1万円を失う構造になっているのです
これは節税ではなく、「お金が減る仕組み」そのものです
発生するリスクのパターン
赤字物件は、平常時ですら資金繰りに苦しむ構造です
そこに次の要素が重なると、一気に破綻リスクが高まります
- 赤字と金利上昇
毎月の赤字がさらに拡大し、持ち出し額が急増する - 赤字と修繕発生
給湯器・外壁・屋根など、数十万円〜百万円単位の急な支出が発生する - 赤字と連続した空室
家賃収入ゼロでも、ローンと固定費だけは毎月の支出が発生する
これらはすべて、ある日突然、同時に襲ってくるリスクです
節税だけを目的にした赤字物件は相場が少し崩れただけで
簡単に資金繰りが行き詰まってしまうリスクがあることを理解しておきましょう
第7章:節税で失敗しない人が必ず守っている3つの基準
ここまで数々の節税ミスを見てきましたが
逆に「長く安定して残している人」には、共通する判断基準があります
主に3つの基準があげられます
基準その① キャッシュフローが必ず残る構造か
どんな節税をしても
「最終的に手元にお金が残るか」が最も大事な事です
- 税金は減った
- でも毎月の持ち出しが増えた
これでは意味がありません
節税はあくまで
「キャッシュフローを守るための補助輪」であって
主役ではありません
基準その② 税務署に説明できる経費か
経費の基準は一貫してシンプルです
- その支出は
- どの業務に
- どのくらい必要だったのか
これを第三者に説明できるかどうか
「なんとなく経費にしている」「グレーだけど通りそう」
この発想をしているうちは、節税は常に時限爆弾になります
基準その③ 出口(売却・法人化・相続)まで見えているか
節税は、今年だけ、今期だけ、などの目の前だけを見て行うものではありません
- 将来売却するときにどうなるか
- どこで法人化するのか
- 相続時に誰が困るのか
出口まで含めて考えてこそ、本当の節税戦略になります
まとめ
節税は「利益を最大化する魔法」ではありません
間違った節税は、税金よりも大きなお金を失う原因になります
サラリーマン不動産投資の本質は「節税」ではなく
「安全に、長く、お金が残り続ける構造」を作ることです

節税の本当の意味は、税金を減らすことではなく
お金の流れを壊さないことと理解しておきましょう




